小売電気事業者に東京電力グループも、電話会社ではKDDIが初めて登録:電力供給サービス(2/2 ページ)
新規参入組で注目を集めるのはKDDIである。KDDIは沖縄県と一部の離島を除く全国各地を対象に、2016年4月から家庭向けに「auでんき」を販売する(図3)。電力と通信サービスのセット割引に加えて、ポイントプログラムも実施して顧客を開拓していく。通信大手3社の中では先頭を切って小売電気事業者の審査を通過した。今後はソフトバンクとNTTドコモも参入して、電力+通信の競争が激しくなる。
図3 「auでんき」のサービス提供イメージ。出典:KDDI
すでに新電力として販売実績がある事業者の中では、日本生活協同組合連合会が2014年に設立した「地球クラブ」の取り組みがユニークだ。太陽光やバイオマスなど再生可能エネルギーで作った電力を仕入れて、首都圏にある生協の店舗や物流施設に電力を販売する(図4)。生協グループで消費する電力を再生可能エネルギーへ転換する事業の一環である。
図4 再生可能エネルギーによる電力を販売する「地球クラブ」。出典:日本生活協同組合連合会
異業種からの参入組では、新日鉄住金エンジニアリングや川重商事といったプラント会社のほか、住宅のミサワホーム、石油のシナネン、飲食の「とんでん」が小売電気事業者として登録する。単なる電力の小売にとどまらず、多彩なサービスを組み合わせた事業者が続々と登場してくる。
- 電力の自由化でエネルギー産業は激変、ガスと石油を加えて水平連携へ
2015年4月に始まる電力システム改革を機に、エネルギー産業は史上最大の転換期に突入する。電力会社の地域独占体制が崩れる一方で、ガス市場の開放と石油市場の縮小、水素エネルギーの拡大が進み、覇権争いは一気に激しさを増す。多様なエネルギーを安価に供給できる総合力の勝負になる。
- 小売営業ガイドラインが固まる、セット販売の説明や電源構成の開示など
政府は電力の小売営業に関するガイドラインの素案を策定した。小売電気事業者に家庭向け標準メニューの公表を求めるほか、ガスや電話とセット販売する場合の割引・解除条件の説明も必要とする。原子力や再生可能エネルギーを含む電源構成の開示は義務化せずに、「望ましい行為」にとどめる。
- 電力の購入先変更を検討する人が8割に、電気の質に不安も
電力の小売自由化が一般にどのくらい認知されているのか。資源エネルギー庁が全国1000人を対象に調査した結果、9割以上が自由化を認識していて、購入先の変更を検討する人も8割に達した。電気料金の低下に期待する一方で、電気の質など供給面の情報は浸透していない。
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