積雪地域では暖房などに多くのエネルギーを使用するため、ゼロエネルギーハウスの実現は難易度が高くなる。積水化学工業は太陽光や蓄電池、HEMSなどを活用することで、こうした積雪地域でもゼロエネルギーハウスの達成を目指せる「スマートパワーステーションN」を発売する。
「セキスイハイム」を展開する積水化学工業 住宅カンパニーは、北海道を除く積雪エリアを対象に、大容量の太陽光発電システム(PV)の搭載を可能にしたスマートハウス「スマートパワーステーションN」を2016年1月23日から発売する。
積水化学工業は2013年10月に「ゼロエネルギー住宅」の実現を目指す住まいとして大容量PVとホームエネルギーマネジメントシステム「スマートハイム・ナビ」(HEMS)、さらに定置型リチウムイオン蓄電池「e‐Pocket(イーポケット)」の3点を標準搭載する「スマートパワーステーション」シリーズを全国(北海道、沖縄、および積雪地域を除く)で発売した。同シリーズは、販売開始からの2年間で累計約3000棟を販売するなどの実績を残し、実際に入居済みの家庭では98%がゼロエネルギーを達成しているという。
今回発売する「スマートパワーステーションN」は、同シリーズで導入したPV一体型屋根を展開し、積雪エリアでもゼロエネルギー住宅の実現に取り組むもの。積雪地域では、冬場のエネルギー消費量が多く、光熱費が割高になる傾向がある。そのため冬場の積雪とエネルギー消費量の多さから、ゼロエネルギーの達成は難しい状況だった。スマートパワーステーションNは、大容量PVの搭載を可能とすることで夏場の発電量を拡大し、この電力をHEMSや蓄電池を使ってマネジメントすることで、ゼロエネルギー達成を目指す(図1)。
積雪エリア向けに、屋根面積を拡張する1625ミリメートルのロング庇(ひさし)と、積雪に強い発電パネルを屋根全面に設置する工法を開発。これにより約110平方メートル(34坪)の標準的な建物でも10kW(キロワット)以上の太陽光発電設備を搭載することが可能となり、ゼロエネルギー住宅の実現に貢献する。
また同社の温水ヒートポンプ式床下輻射暖房システム(ウォームファクトリー)に、新たに寒冷地対応仕様の「ウォームファクトリーN」を追加。1階フロア全体を輻射熱で暖め、1日を通して居室と非居室(廊下や脱衣所など)を少なくすることで、冬場の快適性をより高める。住宅内の各エリアの温度差により、心筋梗塞や脳血管障害のリスクを高める「ヒートショック」も軽減する狙いだ。
さらに大容量PVとHEMS、蓄電池を搭載した。PVによる発電に加え、HEMSで宅内の電力を「見える化」する。加えて蓄電池に割安な深夜電力をためることで、冬の暖房費が家計に占める割合が大きな地域でも、快適な生活を続けながら年間で「光熱費ゼロ」の暮らしが実現可能になるという。
積雪地域で気をつけなくてはならないのが雪害だ。雪害は重大事故の発生原因につながり、その事故の約7割が屋根の雪下ろし時に発生している。スマートパワーステーションNでは、独自のフラット屋根と最深垂直積雪量200センチのエリアまで建築可能な強靭な屋根・構造体によって、雪下ろしを不要にし、こうした雪害リスクを低減する。雪を下ろすスペースを必要としないことから、住宅の敷地を有効に活用することも可能だ(図2)。
販売目標は2016年中に200棟を計画(積雪地域全体)。販売価格は3.3平方メートル当たり税別70.3万円台から。
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