水素エネルギーで日本をリード、太陽光発電も全国一の導入量エネルギー列島2015年版(40)福岡(2/4 ページ)

» 2016年01月26日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

地域で生まれるバイオマスから水素を作る

 もう1つの注目プロジェクトは、下水から作ったバイオガスで水素を製造する試みだ。福岡市内の下水を処理する「中部水処理センター」の構内で、2015年3月に水素製造装置が運転を開始した。製造した水素は併設の水素ステーションで一般の燃料電池車に供給している(図3)。世界で初めて下水バイオガスによる水素ステーションを実現した画期的な取り組みである。

図3 下水バイオガスによる水素ステーション(上)、下水から水素を作って燃料電池車に供給するプロセス(下、画像をクリックすると拡大)。出典:福岡市役所

 バイオガスから水素を製造する方法は、九州大学で実施しているような電力を使って水を分解する方法とは違う。下水処理で発生するバイオガスに含まれるメタンを改質して水素を製造する(図4)。この方法ではCO2が発生するが、吸着材を使ってCO2を除去して純度の高い水素を作ることが可能だ。

図4 下水バイオガスから高純度水素を製造する方法(画像をクリックすると拡大)。出典:福岡市役所ほか

 同様に生物由来の資源から水素を製造する試みは木質バイオマスでも進んでいた。福岡市を拠点に九州全域で石油製品を販売する新出光が2011年に、県南部の大牟田市で水素製造プラントの「福岡ブルータワー」の試運転を開始した(図5)。

図5 「福岡ブルータワー」の全景。出典:大牟田市産業経済部

 このプラントでは県内の森林から調達した間伐材などを燃焼させて、発生したメタンガスから水素を製造する。1日に15トンの木質チップを使って7200立方メートルの水素の製造を目指した。木質バイオマスを活用することで、通常のLNG(液化天然ガス)から水素を製造する方法と比べてCO2の排出量を75%削減できる見通しだった。

 ところがメタンガスを発生させる工程で技術的な課題を解決できず、残念ながら2015年9月に福岡ブルータワーを閉鎖する結果になってしまった。4年間に及ぶプロジェクトは実を結ばなかったものの、再生可能エネルギーを活用した水素の製造に取り組む福岡県の先進事例の1つである。

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