黒豚の産地として有名な鹿児島県では、養豚に伴って発生する大量の排せつ物の処理が地域の大きな課題だ。排せつ物を発酵させてバイオガスを製造する実証試験が鹿児島大学で進んでいる。バイオガスの製造工程で生じる消化液を活用して、バイオマス燃料になる植物の栽培試験にも取り組む。
鹿児島大学が豚の排せつ物を利用したバイオガスの製造試験を実施中だ。農学部の施設内にバイオガス化装置を導入して2015年11月から実証試験を続けている(図1)。排せつ物を発酵させて燃料になるバイオガスを製造するのと同時に、副生物の消化液を農業に利用する方法や効率的な処理システムについても試験を通じて検証する計画だ。
バイオガス化装置は大阪府でバイオガス発電施設を建設した実績のあるリナジェンが開発した。大阪府の発電施設は食品廃棄物を発酵させてバイオガスを製造する方式だが、豚の排せつ物の場合には悪臭を発する窒素成分の処理が大きな課題になる。鹿児島大学とリナジェンは科学的なアプローチを試しながら、豚の排せつ物からバイオガスを効率的に製造する手法の確立を目指す。
バイオガスと同時に生じる消化液にも高濃度の窒素成分が含まれている。消化液は肥料として使うことが可能で、鹿児島大学では機能性食品の原料になる「ミドリムシ」の培養試験や、バイオマス燃料になるイネ科の植物「エリアンサス」の栽培試験も合わせて実施する(図2)。エリアンサスは農作物の栽培が難しい場所でも成長できるうえに、炭素成分を多く含むことからバイオマス燃料として注目を集めている。
さらに実証試験では消化液の窒素成分を効率的に処理して、海や川に放流できるようにする技術の開発にも取り組む。鹿児島県を中心にバイオ環境事業を展開する栄電社が実証試験に加わり、同社が開発した消化液処理装置を使って窒素成分を除去する技術の有効性を検証する(図3)。
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