再生可能エネルギーを利用したユニークな試みは小水力発電や風力発電でも始まっている。小水力発電では薩摩川内市で2015年6月に実証試験を開始した「小鷹(こたか)水力発電所」が目を引く。わずか3メートルしかない水流の落差で発電するために、らせん状の巨大な水車を採用した(図5)。
らせん水車は直径が2.2メートルで、長さが5メートル以上ある。水車の上から下に向かって、らせん状に流れる水の力で回転して発電する仕組みだ。川から農業用水を取り込むために設けた井堰(いせき)の近くに水車を設置した。井堰から流れてくる毎秒1.5立方メートルの水量で30kW(キロワット)の電力を作ることができる(図6)。
年間の発電量は11万kWhを見込んでいる。一般家庭で30世帯分の電力に過ぎないが、落差の低い場所に導入できることに加えて、らせん水車の構造がシンプルなため清掃など維持管理の労力を低減できる期待がある。効果を実証できれば、各地の農業用水路に展開して導入コストを削減することも可能になる。
風力発電では2015年3月に運転を開始した「新長島黒ノ瀬戸風力発電所」の建設方法が先進的だ。海をはさんで本土と500メートルほどしか離れていない長島町の丘陵地帯に、発電能力が2MWの大型風車2基を建設した(図7)。四方を海に囲まれた強風が吹く場所で、複雑な風の流れをコンピュータで解析して風車の最適な設置場所を決めた。
風車の内部には風向や風速などを観測するセンサーが300個近く付いている。そのデータをもとに、周辺の風の流れをコンピュータで再現することが可能だ。風車にかかる疲労荷重や寿命に与える影響も分析して、風力発電で課題の安全性を高める狙いがある。九州大学と東芝の共同研究プロジェクトで、東芝が今後の風力発電事業に生かす。
長島町には九州で最大の「長島風力発電所」が2008年から運転を続けている。1基あたり2.4MWの風車が21基も並び、合わせて50MWの発電能力がある(図8)。本土側では川内原子力発電所を見降ろす場所に、「柳山ウインドファーム」が2014年5月から運転中だ。2.3MWの風車12基が連なり、最大で28MWの電力を供給することができる。
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