イビデンの前身は「揖斐川(いびがわ)電力」である。岐阜県内を北から南へ流れる揖斐川の上流は水量が豊富で流れが急なため、水力発電に適している。揖斐川電力は1916年に「西横山発電所」(発電能力3000キロワット)を運転開始して以降、揖斐川の流域に水力発電所を拡大してきた。
業態を変えた現在でも3カ所の水力発電所を運営している。老朽化した発電設備を更新しながら、3カ所を合わせて2万6900キロワットの発電能力がある(図4)。従来は発電した電力を生産拠点の事業場で消費していたが、2012年度以降に設備を更新した2カ所は固定価格買取制度の認定を受けて売電できるようになった。3カ所の中で最も古い「東横山発電所」(1921年運転開始)の設備も現在更新中だ。
水力のほかにも事業場の構内に高効率のガスコージェネレーションシステムや太陽光発電システムを導入して発電量を拡大してきた。2014年度の実績では国内の事業場で消費した4億4300万kWhの電力のうち、水力で1億kWh、ガスコージェネで6200万kWhを自家消費する一方、残りの2億8000万kWhを他社から購入した(図5)。水力発電の売電量は6500万kWhである。
設備を更新中の東横山発電所が稼働すると、同様に発電した電力を売電する見通しだ。固定価格買取制度を適用できれば、売電収入と電力購入費の差額分がコスト削減につながる。新しい設備を導入して発電能力を増強できるため、CO2(二酸化炭素)の排出量を削減するメリットもある。
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