東京電力は1960年に運転を開始した「横須賀火力発電所」の設備を全面的に更新する。6基の石油火力発電設備を廃止して、最新鋭の石炭火力2基を建設する計画だ。発電コストの低い石炭火力に転換するのと同時に、全体の発電能力を224万kWから130万kWへ縮小して燃料費を大幅に削減する。
「横須賀火力発電所」は1853年に米国のペリー艦隊が上陸したことで知られる横須賀市の久里浜(くりはま)にある。東京電力が東京湾岸に展開する火力発電所の1つで、現在は6基の石油火力発電設備と1基のガスタービン発電機で運転中だ(図1)。非常用の発電機を含む合計8基を廃止して、新たに2基の石炭火力発電設備を建設する。
石炭火力発電で最新鋭の「USC(Ultra Super Critical、超々臨界圧)」を採用して、1基あたりの発電能力は65万kW(キロワット)、2基の合計で130万kWになる(図2)。横須賀火力発電所の現在の発電能力は224万kWにのぼるが、それをほぼ半減する形だ。東京電力の火力発電部門が独立した新会社の東京電力フュエル&パワーは「経済性」「環境性」「エネルギーセキュリティ」の3点を設備更新の理由に挙げている。
経済性の面では石油火力は太陽光発電よりも高コストな点が問題で、石炭火力と比べると発電コストは3倍も高い。東京電力の電源構成を見ると、2014年度の時点でも石油火力が16%も占めている(図3)。燃料費を削減するために、石油火力からLNG(液化天然ガス)か石炭火力へ移行を急ぐ必要がある。中東に依存する石油の使用量を抑制することはエネルギーセキュリティの改善にもつながる。
環境性に関しては、発電所から排出する煙が含む有害物質を大幅に減らせる見通しだ。発電に伴って発生するガスを脱硫装置や脱硝装置を通すことで、硫黄酸化物や窒素酸化物の排出量を5分の1以下に抑える(図4)。発電に利用した後の蒸気を冷却するために必要な海水の量も2割くらい少なくて済む。
新たに建設する2基のうち、1号機は7年後の2023年に、2号機は2024年に運転を開始する予定だ。発電能力が15万kW以上の火力発電所を建設する場合には環境影響評価が義務づけられているため、東京電力フュエル&パワーは4月22日に手続きを開始した。
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