Fraunhofer IGBが開発した過酸化水素生成ユニットは燃料電池と似た仕組みで動作する。電流を通じると、水が陽極で酸化されてプロトン(水素イオン)が生成し、ピーエイチ(pH)が下がる。つまり酸性になる。同時に大気中の酸素が、ガス拡散電極である陰極で還元される。酸素とプロトンから過酸化水素(水溶液)ができる形だ。
電解槽の形状は平板型だ(図4)。陽極の面積は130平方センチメートル(cm2)。平板型の構造を採った理由はこうだ。用途に応じてユニットを直列、並列に接続することで、過酸化水素の生産量を柔軟に変えることができる。先ほどのOxFlocプロジェクトで求められる性質だ。Scherer氏によれば、水の体積流量や溶液の組成、電流密度、温度を変えることで、水のpHや過酸化水素の濃度を調整できるという。
Scherer氏の研究チームは、当初、純酸素を平板型セルに通じて、過酸化水素を合成した。陽極の面積は100cm2だった。
この条件の元、濃度50ミリモーラー(mM)の硫酸ナトリウム水溶液中で1L当たり、400ミリグラム(mg)の過酸化水素を得た。合成に必要な電力は過酸化水素1キログラム(kg)当たり10キロワット時(kWh)である。水溶液は循環させず、連続流として扱った。
次に与えるガスを大気に変えた。空気の流量は1時間当たり10L。当初は50mg/Lという過酸化水素の濃度にとどまっていたものの、最終的には1200mgまで増やすことに成功したという(図5)。純酸素を上回る成果だ。
今後はガス拡散電極について研究を重ねる他、面積90〜140cm2の平板セルの評価を進めるとした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.