個別の事業者に対してガイドラインで支援するだけではなく、地域ごとに太陽光発電をサポートする体制も構築していく。自治体が中心になって地域の工務店や電気店を施工・保守事業者として支援しながら、地域に分散する小規模な太陽光発電設備を効率的に運用できるようにする狙いだ(図7)。
太陽光発電のサポート協議会を地域単位に組成して工務店や電気店の活動を支援するのと同時に、施工・保守事業者のデータベースを作って新しい産業として育成する。太陽光発電に伴うトラブルを回避するための研修やアドバイザーの派遣にも取り組んでいく。
その一方で発電した電力を有効に利用するための仕組みを整備することも重要な課題だ。住宅やビルを対象に、エネルギーの消費量を実質的にゼロ以下に抑えるZEH(ゼロエネルギーハウス)やZEB(ゼロエネルギービル)を国の施策で増やす。
ZEHやZEBはエネルギーの消費量を低減するために高性能の断熱材などで建物を造り、省エネ性能の高い設備を導入する。そのうえで太陽光発電による電力を供給できるようにして、消費量を上回る発電量を生み出す(図8)。エネルギーの消費量から発電量を差し引くとゼロ以下になるため、究極の省エネ対策として導入効果は大きい。
政府は2020年度までに新築の戸建て住宅の半分以上をZEHの仕様で建設する目標を掲げて、仕様の標準化などを進めていく計画だ。住宅やビルで太陽光発電の電力を自家消費すれば、発電設備が増えても地域の電力の安定供給に影響を及ぼさない。
ZEHやZEBの拡大を通じて太陽光発電の分散化を促進するのと並行して、より広範囲で太陽光発電の電力を効率的に利用できる体制も整備する。電力市場の自由化を進める中で、住宅やビルで節電した電力(ネガワット)や再生可能エネルギーで生み出した電力(ポジワット)を事業者や卸市場に供給するシステムを構築していく(図9)。
このシステムでは地域内に分散する蓄電池も活用して、電力の需要に合わせて供給量を制御できる「バーチャルパワープラント(仮想発電所)」を実現させる。バーチャルパワープラントは地域全体のエネルギー需給システムを1つの発電所と同じように機能させることが可能で、再生可能エネルギーの導入量を拡大する有効な対策になる。
2016年度から福岡県にある九州電力の「豊前発電所」でバーチャルパワープラントの実証事業が始まった。火力発電所の構内に大容量の蓄電池システムを設置して、再生可能エネルギーの電力を含めて地域の需給バランスを調整する試みだ(図10)。国内で太陽光発電の導入量が最も多い九州で実施するバーチャルパワープラントの成果に大きな期待がかかる。
第2回:「風力発電の導入を法改正で加速、洋上風力も開発しやすく」
第3回:「中小水力発電はコストダウンで普及、低い落差でも電力を作り出す」
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