増え続ける太陽光発電の廃棄物、2018年にガイドライン適用へ法制度・規制

再生可能エネルギーの中でも環境負荷が小さい太陽光発電だが、導入量の拡大に伴って使用後の廃棄物が増えていく。太陽電池モジュールの排出量は2030年代に年間80万トンにのぼる見込みだ。政府は処分方法のガイドラインやリサイクルシステムを整備して2018年度から順次適用する。

» 2015年06月25日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 全国各地の住宅や空き地に太陽光発電設備が急速に普及して、新たな問題が浮上してきた。寿命を終えた発電設備の処分方法だ。環境省の予測によると、2012年度に始まった固定価格買取制度の対象になる太陽光発電設備の大半が20年間は運転を続けるため、2030年代になると使用済みの発電設備が大量に出てくる(図1)。

図1 太陽電池モジュールの排出量の見込み。出典:環境省

 設備の大半を占める太陽電池モジュールの排出量は1年間に80万トンに達することが見込まれる。国全体の産業廃棄物の排出量は現時点で4億トン前後にのぼり、そのうちの0.2%程度に相当する。廃棄処理の体制整備を含めて早めに対策を講じておく必要があるため、環境省を中心に政府がガイドラインの作成やリサイクルシステムの構築に着手した。

 太陽光発電設備を構成する機器や部材の中には、再利用できる素材もあれば有害な物質も含まれている。国内で最も多く普及している多結晶シリコンタイプの太陽電池モジュールを使った場合を例にとると、設備全体の総重量のうち36%が太陽電池のフロントカバーに使うガラスで、同様に36%を架台の鉄が占める(図2)。一方で有害な物質には、はんだに利用する鉛などがある。

図2 太陽光発電設備の素材構成(出力4kWの多結晶シリコン太陽電池モジュールの場合)。BOS:周辺機器(Balance of System)。出典:環境省、NEDO

 ほとんどの素材はリサイクルが可能だが、これから排出量がどんどん増えていくと、リサイクルせずに最終処分に回すケースや、不法投棄の増加も予想される。発電設備の所有者には撤去や処分に伴う費用の負担が大きいことから、リサイクルを含めてコストダウンを図ることも国を挙げて取り組む課題になる(図3)。

図3 太陽光発電設備を処分するプロセスと課題。出典:環境省

 環境省は主な課題を6項目にまとめたうえで、2020年度までに実施する短期の対策と2021年以降の中長期の対策を並行して進めていく方針だ(図4)。短期に取り組む重要な対策は2つある。1つは発電設備の回収からリサイクルまでのシステムを整備する。メーカーや廃棄物・リサイクル業者を対象にした新しい制度を導入する可能性もある。

図4 太陽光発電設備の処分に伴う課題と対策。出典:環境省

 もう1つの対策は発電設備の撤去・運搬・処理に関するガイドラインを作成して関係者に周知する。それぞれ推奨の方法をガイドラインの中で示すほか、関連する資格制度や認定制度に盛り込むことも検討していく。

 環境省は2015年度内に具体策の検討に着手して、3年後の2018年度から順次適用を開始する計画である(図5)。早期の対策が必要なリサイクルシステムの構築やガイドラインの策定は2018年度を想定している。

図5 太陽光発電設備の適正処理に関するロードマップ(画像をクリックすると拡大)。出典:環境省

 このほかにリサイクルを推進するための技術開発をNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が2014〜2018年度の5年計画で取り組む。太陽光発電設備の撤去・回収から分別・分解処理までを低コストで実施する技術を開発していく。このプロジェクトでは分解処理コストを1kW(キロワット)あたり5000円以下(年間20万キロワットの発電設備を処理する場合)に低減することが目標だ。

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