今後10年間の電力需給予測、全国10地域で予備率5%以上に電力供給サービス(1/3 ページ)

長期を見通した電力需給の予測が全国10地域でまとまった。2025年度までの10年間にわたって、すべての地域で需要に対する供給力の予備率を5%以上の状態で維持できる。ただし原子力発電の供給力を織り込まず、今後も電力需要が増え続けることを想定するなど、現実的とは言えない点もある。

» 2016年07月01日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 4月に小売全面自由化を実施して初めての夏を迎えた。これまで夏と冬の電力需給の見通しは電力会社10社の報告をもとに国の委員会がとりまとめてきたが、今年度からは国全体の電力需給の調整役を担う電力広域的運営推進機関(広域機関)が電力会社以外の計画を含めて一元的に集約して予測する。

 広域機関が6月29日に経済産業大臣に提出した2016年度の供給計画によると、今年度の電力需給状況は年間を通して安定した状態が続く。夏と冬の需要が増える時期でも、需要に対する供給力の余力を表す「予備率」は国全体で10%を超える見通しだ(図1)。地域ごとに予備率が3%を切ってしまうと大規模な停電の可能性が生じるが、今年度は安定した電力供給を維持できる。

図1 2016年度の需給予測(全国合計)。出典:電力広域的運営推進機関

 全国各地の送配電ネットワークは10地域の電力会社によって分かれているため、需要と供給のバランスは地域単位で調整する必要がある。10地域の中では東北・東京・中部の3地域で、月によって予備率が7%台まで低下する(図2)。それでも危険な水準の3%は大きく上回る。需要がピークになる時間帯に大規模な発電所のトラブルが重複して発生しない限り、供給力が不足することはない。

図2 地域別の予備率(2016年度、画像をクリックすると拡大)。出典:電力広域的運営推進機関

 注目すべきは長期の需給予測だ。広域機関は2016〜2025年度の10年間にわたって、電力の需要が最大になる8月の予備率も算出している。まず国全体では予備率が最低になる年でも9%台を維持できる(図3)。しかも需要が増え続けることを前提にしている。今後10年間にGDP(国内総生産)が年率1%で拡大し続けて、夏の電力需要も増加すると想定した。

図3 2016(平成28)〜2025(平成37)年の8月の需給予測(全国合計)。出典:電力広域的運営推進機関

 現実には2011年3月の東日本大震災を機に企業と家庭の双方で節電対策が広がり、電力の需要は減少傾向にある。今後も省エネ技術が進展して電気製品の消費電力が減る一方、国の規制によってビルや住宅の省エネが一段と進んでいく。たとえGDPが拡大しても電力の需要が増える状況にはない。そう考えると広域機関の予測よりも予備率が高くなって、国全体で10%を切ることはなさそうだ。

 しかし地域別では極端なバラつきが出ている。驚くべきことに、東京電力の管内では6年後の2022年の夏に予備率が3%を切って2.2%まで低下してしまう(図4)。関西電力の管内でも5年後の2021年の夏に3.1%まで下がる。東日本大震災後に予備率が3%以下になったことは一度もないのだが。

図4 地域別の予備率(2016〜2025年度、画像をクリックすると拡大)。出典:電力広域的運営推進機関
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