今後10年間の供給力は原子力を除いて見通せる状況になった。その間に東京と関西では予備率が3%前後になる予測だが、追加の対策によって5%以上を確保することが可能だ。1つは発電事業者の電源に未契約分の余力がある。たとえば東京で予備率が2.2%まで低下してしまう2022年の夏には35万kWが余っている。関西でも予備率が3.1%に低下する2021年の夏に70万kWの余力が見込める。
もう1つの対策は地域間の電力融通である。地域間で電力を融通するためには両地域の送電線をつなぐ連系線の容量が影響する。それを想定したうえで、東京には北海道と東北から合計で132万kW、関西には中国から85万kWを融通できる。こうした2つの対策を組み合わせれば、東京の予備率は5%を上回り、関西は8%以上を確保できる状態になる(図10)。原子力発電の供給力が不確定でも、長期の電力需給に支障はない。
全国で安定した需給状況を維持していくためには、地域間の電力融通が欠かせない。2016年度の見通しでも、送電線がつながっていない沖縄を除いて9地域すべてが融通を受ける予定だ(図11)。季節や時間帯によって調達する側と供給する側の双方になる。
他の地域から調達する電力量が最も多いのは東京で、大半は東北からの電力である。次に多い関西は四国から、3番目の中国では九州の電力に依存する割合が大きい。年間の需要に対する比率を見ると、中国では16%以上の電力を他の地域から調達する。関西と四国も10%前後の高い比率だが、四国はそれ以上の電力を関西など他の地域に供給する計画になっている。
2016年度の供給計画から国全体の状況が一括で把握できるようになった。広域機関が電力会社を含めて小売電気事業者や発電事業者の計画を一元的にとりまとめる体制になったからだ(図12)。全国10地域の送配電事業者(電力会社の送配電部門)が集約した計画と合わせて、国全体の需給バランスを調整していく。小売全面自由化で電力市場の構造は大きく変わり始めた。
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