夏の電力需給に構造変化、太陽光発電が増えて「脱・電力会社」が加速電力供給サービス(1/2 ページ)

2015年の夏も電力の供給には大きな問題が発生しなかった。震災から4年が経過して電力不足の懸念がなくなってきたのは、需給面の構造変化が急速に進んだからだ。電力会社から新電力へ契約を変更する動きが活発になる一方で、各地域の太陽光発電が想定を上回る供給力を発揮している。

» 2015年10月15日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 電力会社10社が政府に報告した2015年の夏の電力需給状況を見ると、かつてないほど電力に余裕のある夏だったことがわかる。10地域それぞれで最大の需要を記録した日の予備率(需要に対する供給力の余裕)のうち、最低になったのは四国の8.2%だが、それでも危険水準の3%を大きく上回った(図1)。

図1 2015年夏の需給実績(需要が最大になった日。画像をクリックすると拡大して当初の見通しと注釈も表示)。出典:電力需給検証小委員会

 8月に予備率が3%まで低下することを予測していた関西と九州では13%を超えて、電力が不足する心配はなかった。関西と九州は当初の計画よりも供給力を上積みしたものの、最大需要が大幅に減少した。関西では見通しと比べて235万kW(キロワット)、九州では143万kWも少なかった。いずれも見通しと実績に8%以上の差があった。

 予備率が10%以下になった東京・中部・四国の3地域でも需要の減少幅は大きかった。供給力を当初の見通しよりも引き下げたために予備率が1ケタになったに過ぎない。沖縄を含めて全10地域で最大需要は見通しを下回った。

 政府の委員会が各地域の見通しと実績の差を分析したところ、電力の需要に影響する3つの要因のうち、「経済影響」による減少の差が最も大きかった(図2)。この経済影響には景気の変動に加えて、電力会社から新電力へ契約を変更した減少分が含まれている。企業や自治体で脱・電力会社の動きが加速している表れだ。特に東京と中部では経済影響による減少が見通しをはるかに上回った。

図2 2015年夏の需要の見通しと実績の比較(画像をクリックすると拡大)。出典:電力需給検証小委員会

 関西でも経済影響は小さくないが、それ以上に「節電影響」が大きく出た。関西電力が震災後で2回目の値上げを6月に実施したことにより、企業も家庭も改めて節電対策を強化した効果だろう。関西の節電影響は当初の見通しと比べて最大需要を4%以上も押し下げている。

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