原子力発電所の再稼働で需給見通し修正、いつまで続ける過大な需要予測電力供給サービス(1/2 ページ)

関西電力の高浜発電所が再稼働したことを受けて、経済産業省は今冬の電力需給見通しを修正した。従来は2月の予備率を危険水準に近い3.3%で予測していたが、安全圏の6.9%に引き上げた。もはや需要を過大に見積もって予備率を低く出し、原子力発電所の再稼働を正当化する必要はない。

» 2016年02月09日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 経済産業省と電力会社が連携して原子力発電所を再稼働させるシナリオは単純にできている。電力の需給見通しを現実以上に厳しい数値で出して国民の不安をあおる一方、電気料金を値上げして家庭や企業のコストを増大させる。原子力発電所が再稼働すれば、需給状況を改善できるうえに、電気料金も引き下げられてメリットが大きいことを強調する。関西電力による原子力発電所の再稼働は、まさにこのシナリオで進んでいる(図1)。

図1 再稼働した「高浜発電所」の外観と設備構成。出典:関西電力

 以前から妥当性が疑われる夏と冬の需給見通しだが、経済産業省は2月5日に今冬の需給見通しを修正した。関西電力の高浜発電所3号機が前日に再稼働して、供給力が増加したことを理由に挙げている。当初は関西の予備率(需要に対する供給力の余裕)が2月に3.3%まで下がると予測していたが、6.9%に引き上げた(図2)。同様に原子力発電所が再稼働した九州の予備率も上方修正した(当初の予測は2月に5.8%、3月に4.7%)。

図2 高浜発電所の再稼働に伴う2月の需給見通し修正(画像をクリックすると9地域すべてを表示)。出典:資源エネルギー庁

 予備率が3%を切ると、停電の可能性が生じる危険な状況になる。これまで関西電力は九州電力とともに毎年の夏と冬の予備率を3%で出し続けてきた。しかし実際に3%まで下がったことは一度もなく、2015年の夏には常に10%以上を維持した。今冬も1月25日(月)に予備率が8%になったのが最低で、当初予測した1月の予備率4.3%を大きく上回っている。

 それも当然で、もともと前年の実績以上に需要を大きく見積もり、需給状況を実態よりも厳しく予測しているからだ。にもかかわらず経済産業省と電力会社は非現実的な需給見通しを出し続けてきた。原子力発電所を再稼働させるための露骨なPR活動である。新聞社をはじめ一部のメディアも「綱渡りの電力需給が続く」などと喧伝して、実態と異なる報道を繰り返した。

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