IoT時代のエネルギー事業、顧客が求めるのは「電気やガス」ではない電力供給サービス(2/3 ページ)

» 2016年07月15日 11時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

IoT時代に東京電力は何を考えるのか

東京電力HD 代表取締役副社長・技監の山口博氏

 東京電力HDは代表取締役副社長・技監を務める山口博氏が登壇し、「電力におけるデジタライゼーションの可能性」と題して講演を行った。

 日本のエネルギー市場では、電力広域的運営推進機関の発足による電力融通範囲の拡大、2016年の4月から始まった電力の小売全面自由化、さらに2020年までに実施予定の発送電分離など、電力システム改革の進行によって事業者を取り巻く環境が大きく変化している。さらに再生可能エネルギー電源の普及に伴う分散電源の広がりや、発電、蓄電、制御を組み合わせた「マイクログリッド」の実現に向けた取り組みも進むなど、これまでとは異なる電力網の構築が進んでいる。

 山口氏は同社がこうした市場変化に対応するための重要なポイントとして「エネルギーバリューチェーン」の強化を挙げた(図2)。「今後は、デジタル化を通じて顧客・社会が最適かつ快適にエネルギーを利用できる環境を整えていく必要がある。そのためには発電、送配電、分散電源、顧客までのバリューチェーンを強化していくことが重要と考えている。バリューチェーンは大きく発電・送配電設備と顧客に分けられるが、鍵となるのがこの2つをつなぐデータプラットフォームだ。エネルギー産業のデジタライゼーション(デジタル化)によって、こうしたプラットフォームに集まるデータを分析し、新しいサービスを生み出してくことが可能になるのではないかと期待している」(同氏)

図2 「エネルギーバリューチェーン」のイメージ(クリックで拡大)出典:東京電力

 山口氏はこうした新サービスの創出に向けた取り組みとして、スマートメーターシステムのセキュリティおよび運用保守を効率的かつ一元的に管理する「スマートメーターオペレーションセンター」を2015年7月に設置した事例や、自前主義ではなく、異業種と連携したサービス開発に向けオープンイノベーションプラットフォームを開設した例などを紹介した。

 また、新サービスの創出のみならず自社業務の生産性向上でもデータ活用を推進する。デジタルデバイスの活用や業務処理のWeb化よる火力発電所などの点検作業の効率化の他、センサーデータを活用して配電ネットワークの監視業務を効率化するといった事例を紹介した。

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