東京電力のシステム不具合は原因を特定できず、問題解決は10月以降に電力供給サービス(3/3 ページ)

» 2016年07月27日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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システムを見直して発生原因を特定へ

 実際に小売電気事業者が受ける影響は大きい。身内でもある東京電力エナジーパートナーは、電気料金の請求遅延が発生していることに対するお詫びをウェブサイトのトップページに掲載している(図7)。「検針結果を受領次第、順次ご請求させていただきますので、今しばらくお待ちいただきますようお願いいたします」と書いてあるが、使用量が確定できずに「協定」によって電気料金を決める場合があることには触れていない。

図7 東京電力エナジーパートナーがウェブサイトに掲載中のお詫び(画像をクリックすると拡大)。出典:東京電力エナジーパートナー

 すでに40万件を超える新規申し込みを獲得した東京ガスも「電気料金のお知らせと請求の遅れについて」をウェブサイトに掲載した。ただし詳細の説明は避けて、「影響が確認されたお客さまには、速やかに説明させていただきます」と記載するにとどめている。

 東京ガスは電気料金の請求が遅れている顧客に対して、6月上旬からダイレクトメールによる連絡を開始している。電気使用量を確定することが困難な場合には、7月末をめどに使用量の確定に向けた個別協議に入る予定だ(図8)。

図8 東京ガスの対応(画像をクリックすると拡大)。DM:ダイレクトメール。出典:東京ガス

 小売電気事業者にとっては本来の営業活動とは別の手間がかかるうえに、顧客の信頼感に影響を及ぼすことは必至だ。東京ガスのほかにも100社以上の小売電気事業者が同様の対応を迫られている。国を挙げて華々しくスタートした電力の小売全面自由化に大きな影を落とす結果になってしまった。

 東京電力PGは市場に与えた影響について、以下のようなコメントを7月25日に発表している。

「電気使用量データのお知らせの長期にわたる遅延等は、当該小売電気事業者さまおよび電気をご使用される皆さまの生活・社会経済活動にご迷惑をおかけすることはもとより、契約切替に対するご不安など、電力小売全面自由化をはじめとする新たな電気事業制度への広く社会の皆さまのご期待を損ねることとなりかねません。当社はこうした状況を一日も早く解消するため、報告した追加対策を着実に実施することにより、8月末までに電気使用量データ等のお知らせの遅延解消に全力で取り組んでまいります。」

 はたして8月末までに未通知の問題は解消できるのだろうか。東京電力PGが委員会に報告した今後の対策を見ると、根本的に解決できる時期は早くても10月になる。従来から続けている暫定的な対策に加えて、託送業務システムの不具合を解消する恒久的な対策を実施する予定だ(図9)。

図9 未通知の解消に向けた今後の対応策。SM:スマートメーター、DB:データベース、MDMS:メーターデータマネジメントシステム。出典:東京電力パワーグリッド

 恒久対策チームは託送業務システムを見直して、不具合の発生原因を特定する任務を負う。発生原因を特定できたら、抑止する方策を検討・実施する。人員も10人から20人へ倍増させる計画だが、一連の作業を完了できるめどは現在のところ10月末である。

 託送業務システムの不具合とは別に、東京電力PGはスマートメーターの設置作業にも遅延を生じていて、9月中に解消できる見通しを明らかにしている。電気使用量の未通知にはスマートメーターの設置遅延が影響を及ぼしているため、設置遅延の問題がなくなって1カ月程度で託送業務システムの不具合も解消できる見込みだ。想定どおりに全面解決できることを願いたい。

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