四国電力が原子力発電所の再稼働にこだわる理由はほかにもある。CO2(二酸化炭素)排出量の削減だ。四国電力が2015年度に販売した電力の内訳を見ると、実に55%を石炭火力が占めている(図4)。同様にCO2の排出量が多い石油火力と合わせると全体の7割を超える。
この結果、電力1kWh(キロワット時)あたりのCO2排出係数は0.669キログラムと高い水準のままだ(固定価格買取制度による削減効果の調整後)。電力業界全体では2030年度にCO2排出係数を0.37キログラム/kWhまで低下させる目標を掲げている。四国電力は現状からほぼ半減させる必要があるが、CO2排出量が少ないLNG(液化天然ガス)を燃料に使える火力発電設備は現在のところ「坂出発電所」しかない(図5)。
原子力発電は出力の調整がむずかしく、需要の増減に合わせて火力発電と併用する必要がある。原子力を再稼働させるだけではCO2排出量を大幅に低下させることはできない。火力発電設備をLNGに転換して高効率化を図ることが急務だ。しかし原子力の安全対策に膨大な費用がかかる状況では、火力発電の設備投資額も限られてしまう(図6)。
伊方発電所の3号機は「プルサーマル」方式であることから、政府や原子力産業からの期待も大きい。プルサーマルはウランとプルトニウムを混合したMOX燃料を使って発電する方式で、発電後に再処理して燃料をリサイクルできる利点がある(図7)。
ところが青森県の六ヶ所村で建設中の国内唯一の再処理工場は稼働の見通しが立っていない。加えてプロサーマル方式は重大事故が発生した時の被害が通常の方式と比べて増大する懸念もある。はたして伊方発電所の再稼働が四国電力と地域の双方にとってプラスに働くのか、大きな疑問が残ることは否めない。
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