太陽光発電では富山湾に面した富山新港で2016年3月にメガソーラーが運転を開始している(図10)。港の一角を占める7万平方メートルの用地に2万枚の太陽光パネルを設置した。発電能力は4.5MW(メガワット)で、年間に約500万kWhの電力を供給できる。
富山新港が立地する射水市(いみず)では木質バイオマス発電所も稼働中だ。地元のグリーンエネルギー北陸が発電能力5.8MWで2015年5月に運転を開始した(図11)。年間の発電量は3900万kWhを見込んでいて、1万世帯分を超える電力を供給できる。
燃料の木質バイオマスは周辺地域の森林で発生する間伐材などを年間に約7万トン利用する計画だ。県の森林組合連合会と長期の供給協定を締結して、安定した調達体制を構築した。さらにグリーンエネルギー北陸が100%出資して木質チップの製造会社も運営している。
このほかに再生可能エネルギーのユニークな試みとして、アルミ系の廃棄物から水素を製造するプロジェクトが進んでいる。富山県内の有力企業が共同で設立したアルハイテックがNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援を受けて2014年から取り組んできた。2016年4月には検証用のプラントが稼働して、周辺の工場から排出するアルミ系の廃棄物を使って水素の製造に着手した(図12)。
検証プラントでは廃棄物からアルミを分離して、アルカリ溶液と反応させて高純度の水素を発生させる。すでに1時間あたり2キログラムの水素の製造に成功して、今後は最大5キログラムまで製造能力を拡大する予定だ。燃料電池車の走行距離に換算して700キロメートルに相当する水素を1時間ごとに製造できるようになる。
アルミ系の廃棄物は紙パックや強化プラスチック製品などに付いているアルミニウムを利用可能だ。原料が生物由来ではないためにCO2フリーの水素ではないが、廃棄物の再資源化で水素エネルギーを生み出せるメリットは大きい。検証プラントで実用性を確認したうえで、アルミ廃棄物を排出する全国各地の工場に展開していく。
2015年版(18)富山:「水の王国に小水力発電が広がる、地熱やバイオマスも導入開始」
2014年版(18)富山:「小水力発電所を45カ所へ、農村から温泉地まで用水路がめぐる」
2013年版(18)富山:「小水力発電で全国第2位、農業用水から下水までエネルギーに」
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