急流に展開する小水力発電の効果、全国2位のエネルギー包蔵量を生かすエネルギー列島2016年版(18)富山(2/3 ページ)

» 2016年08月23日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

古い水車を更新すれば発電量が増える

 小水力発電の取り組みは農業用水路にも広がる。東部の朝日町を流れる「小川用水」には、2016年7月末に完成したばかりの小水力発電所がある(図6)。川の右岸を流れる用水路から発電所まで、700メートルにわたって導水管を敷設した。水流の落差は12メートルになり、最大で190kWの電力を供給できる。

図6 「小川用水発電所」の位置と周辺地域。出典:朝日町土地改良区

 年間の発電量は166万kWhを見込み、一般家庭の460世帯分に相当する。発電した電力は全量を固定価格買取制度で北陸電力に売電して、地域の土地改良施設の維持管理費にあてる方針だ。発電能力が200kW未満の買取価格は1kWhあたり34円(税抜き)で、年間に5600万円の売電収入になる。

 農業用水路の水量も季節によって変動する。小川用水発電所が導入した水車発電機は、水流を取り込む入り口の部分で流量を調整できる仕組みだ(図7)。このタイプの水車発電機は保守が簡単なことから、農業用水路で水量の多い場所に適している。

図7 水車発電機の構造。出典:朝日町土地改良区

 富山県内では古い水力発電所の水車を新しいものに交換して、発電能力を増強する取り組みも進んでいる。1962年に運転を開始した発電能力1万kWの「奥山発電所」では、2015年10月に水車を更新して発電能力を300kW引き上げた(図8)。これで年間に250世帯分の電力を増やすことができる。

図8 「奥山発電所」の全景(上)と水車(下)。出典:北陸電力

 北陸電力は水力発電所の新設と設備更新を通じて、年間の発電量を2008年度から2020年度までに1億kWh拡大する計画を推進中だ。すでに2016年度内に目標を達成できることが確実になり、2020年度の目標値を1億3000万kWhに修正した。一般家庭の使用量に換算して3万6000世帯分の電力が増える。

 富山県では固定価格買取制度がスタートした2012年よりも前に稼働した水力発電所が多い。それでも新たに買取制度の認定を受けて運転を開始した中小水力発電の規模は全国で10番目になった(図9)。加えて太陽光発電とバイオマス発電の導入量が徐々に増えてきた。

図9 固定価格買取制度の認定設備(2015年11月末時点)

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