水道の圧力差エネルギー、全国274カ所で1万9000kWの発電能力:自然エネルギー(2/2 ページ)
小水力発電による電力の供給量が増えることで、CO2排出量は全国で年間に9万2000トンを削減できる(図3)。さらに発電した電力を固定価格買取制度で売電すれば、1kWhあたり34円(税抜き)で年間に53億円の収入を見込める。1カ所の平均額は1960万円になり、買取期間の20年間の累計で4億円近い収入を得られる計算だ。売電収入によって水道施設の維持管理費を軽減できる効果は大きい。
図3 地域ブロック別のCO2削減量ポテンシャル(上)、全量売電による想定収入(下)。出典:環境省
水道施設で小水力発電を実施する方法の1つとして、水道管そのものに発電設備を組み込む方法がある。環境省の実証事業で開発した「管路用マイクロ水力発電システム」が代表的な例で、これまでに富山県の南砺市、福島県の相馬市、兵庫県の神戸市の水道施設で導入実績がある(図4)。
図4 「管路用マイクロ水力発電システム」の構成と導入例。出典:環境省
発電能力は1台で22kWと75kWの2種類がある。水道管1本ごとに1台ずつ水車発電機を設置する方法で、1カ所の施設に複数台を導入することも可能だ。相馬市の水道施設では3台を導入して、最大79kWの電力を供給できるシステムを構築した。
- 狭い水路でも低コストな発電を可能に、南相馬市で小水力実証を開始
ダイキンは上水道の水流エネルギーを利用して発電する、管水路用マイクロ水力発電システムの実用化に向け、2015年7月30日から福島県南相馬市の浄水場で実証運転を開始する。発電出力は最大71.4kW、年間発電量は619MWhを見込んでいる。
- 10kW以下に需要あり、小水力発電
神戸市は海岸近くに人口が集中するものの、六甲山地の北部や西部でも都市化が進んでいる。さまざまな高度に位置する住宅に水道を供給しようとすると、水圧の調整が難しい。この問題を解決できる「超小型マイクロ小水力発電システム」の共同研究を、ダイキン工業と神戸市が共同で開始した。
- 浄水場の水素を燃料電池車に、東京の水道システムがオリンピックで進化
東京都は2020年に開催するオリンピックに向けて「東京水道イノベーションプロジェクト」を開始した。世界一の水道システムを目指して、スマートメーターによる電力・ガス・水道の共同検針システムを導入するほか、浄水場で発生する水素を回収して燃料電池車に供給する実証研究にも着手する。
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