福島県内の2カ所で計画を進めてきた「石炭ガス化複合発電」による火力発電所の新設工事が10月に始まる。発電能力が1基で54万kWに達する世界最先端の石炭火力発電設備を建設する計画で、2020年から2021年にかけて順次運転を開始する予定だ。福島の復興に向けて地域の雇用も生み出す。
「石炭ガス化複合発電」(IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle)は日本が世界をリードする発電技術の1つで、LNG(液化天然ガス)を燃料に利用する火力発電と同等の発電効率を発揮する。燃料が安い石炭を使ってCO2(二酸化炭素)の排出量を削減できる利点があり、国を挙げて実用化に取り組んでいる。
IGCCによる最先端の石炭火力発電設備を福島県内の2カ所に建設することが正式に決まった。1カ所は太平洋沿岸の広野町(ひろのまち)にある東京電力の「広野火力発電所」の構内で、既設の石炭火力発電設備に隣接して建設する(図1)。すでに貯炭場の工事を2015年4月から進めていて、5年後の2021年9月に営業運転を開始する計画だ。
もう1カ所は同じ太平洋沿岸のいわき市にある常磐共同火力の「勿来(なこそ)発電所」である(図2)。東京電力と東北電力が共同で運営する火力発電所で、現在運転中の5基のうち1基は日本で初めてIGCCを商用化した発電設備だ。既設のIGCCの発電能力は25万kW(キロワット)だが、2カ所に新設するIGCCでは54万kWに達する。
勿来発電所では既設の設備の改修工事が不要なことから、広野町よりも早く2020年9月に営業運転を開始できる見込みだ。1年前の2019年9月には試運転に入ることを想定している。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの時点では最先端のIGCCが福島県で稼働している状況を世界に示して、震災からの復興をアピールする狙いがある(図3)。
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