古い水力発電所を再生、太陽光とバイオマスを加えて自給率30%超へエネルギー列島2016年版(32)島根(1/4 ページ)

島根県では運転開始から40年以上を経過した中小水力発電所のリニューアル事業を実施中だ。県営の7カ所の設備を更新して発電量を増やし、固定価格買取制度で売電収入を伸ばす。太陽光発電やバイオマス発電も拡大しながら、再生可能エネルギーによる電力の自給率を2019年度に30%超へ高める。

» 2016年11月29日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 島根県の企業局が運営する中小規模の水力発電所は合計で13カ所ある。そのうち半分以上が運転開始から40年以上を経過したため、老朽化した設備をリニューアルする事業を進めているところだ。最初に対象になった「八戸川(やとがわ)第二発電所」のリニューアルが2016年4月に完了して運転を再開した(図1)。

図1 「八戸ダム」の全景(上)、ダムの直下で運転中の「八戸川第二発電所」の建屋(下)。出典:島根県企業局

 この水力発電所は県内最大の「八戸ダム」の直下で1976年に稼働したのが始まりだ。ダムが放流する最大10立方メートル/秒の水量を生かして、発電能力は2500kW(キロワット)に達する。ダムの内側にある取水口から水車発電機まで水流の落差は30メートルになる。大きな落差を生かすために横軸フランシス水車を採用している。

 リニューアルでは同じタイプの新しい横軸フランシス水車に交換した(図2)。発電能力は2500kWで変わらないが、設備を刷新したことで故障による停止時間が以前よりも短くなる見通しだ。合わせて固定価格買取制度の認定を受けて、従来よりも高い買取価格で売電できるようになった。

図2 リニューアルした水車発電機(画像をクリックするとリニューアル以前も表示)。出典:島根県企業局

 八戸ダムの豊富な水量は3カ所の水力発電所で利用している。1958年に運転を開始した「八戸川第一発電所」は2基の発電設備で構成して、最大6300kWの電力を供給できる。リニューアルを完了した第二発電所よりも下流にあり、山の中に設けた貯水池から水車発電機へ水を大量に送り込む方式だ(図3)。水流の落差は60メートル以上になる。

図3 「八戸川第一・第二・第三発電所」の構成。出典:島根県企業局

 一番新しい第三発電所は2000年に運転を開始した小水力発電所だ。下流の環境を維持するためにダムから常に放流する河川維持流量を利用して発電する(図4)。ダムの上部から水車発電機に送り込む水流の落差は54メートルもあるが、水量は最大でも0.6立方メートル/秒と少ない。発電能力は240kWで3つの発電所の中では最も小さい。

図4 「八戸川第三発電所」の建屋。出典:島根県企業局
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