古い水力発電所を再生、太陽光とバイオマスを加えて自給率30%超へエネルギー列島2016年版(32)島根(4/4 ページ)

» 2016年11月29日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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丘陵では29基の大型風車が動き出す

 島根県の再生可能エネルギーは太陽光発電と中小水力発電に続いて、風力発電とバイオマス発電の導入量も増えてきた(図11)。固定価格買取制度の適用を受けて運転を開始したバイオマス発電の規模は全国で第9位に入っている。江津市の工業団地で稼働中の木質バイオマス発電所が代表的な事例だ。

図11 固定価格買取制度の認定設備(2015年11月末時点)

 県東部の宍道湖(しんじこ)の湖畔にある下水処理場では、バイオガス発電設備の導入プロジェクトが進んでいる。下水処理で発生するバイオガス(消化ガス)を燃料に利用する発電設備で、2018年4月に運転を開始する予定だ(図12)。

図12 「宍道湖東部浄化センター」の全景(上)、バイオガス発電所の完成イメージ(下)。出典:島根県宍道湖管理事務所

 1台で253kWの発電能力があるガス発電機3台を導入して、合計で759kWの発電能力になる。年間の発電量は430万kWhを見込んでいて、1200世帯分の電力を供給できる。このプロジェクトは民間の資金とノウハウを活用するPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)方式で実施する。

 下水処理場を運営する島根県は初期投資が不要で、バイオガスの売却料と土地の使用料を発電事業者から得られるスキームだ。最近は全国各地の下水処理場で同様のPFI方式によるバイオガス発電事業が活発になってきた。従来はバイオガスを焼却処分する方法が一般的だったが、新たに再生可能エネルギーの電力に生まれ変わる。

 風力発電では2016年6月に運転を開始した「ウインドファーム浜田」の規模が大きい。浜田市の丘陵地帯に合計29基の大型風車を設置した巨大な風力発電所で、発電能力は48MWにのぼる(図13)。

図13 「ウインドファーム浜田」の全景(画像をクリックすると拡大)。出典:SBエナジー、三井物産

 年間の発電量は8500万kWhに達して2万3600世帯分の電力を供給できる。固定価格買取制度で売電して、年間に18億7000万円の収入になる想定だ。ソフトバンクグループのSBエナジーと三井物産が共同で設立した「グリーンパワー浜田」が発電所を建設・運営する。

 島根県の豊富な資源を生かした再生可能エネルギーの導入量は着実に拡大していく。2014年度の時点では県内の電力消費量(51.4億kWh)のうち21%に相当する10.9億kWhを再生可能エネルギーで供給できた。さらに2015年度には13.1億kWhに増加して、電力の自給率は25%まで上昇している。

 県が策定した中期計画の目標では、2019年度に再生可能エネルギーの発電量を15.6億kWhまで伸ばして自給率を30%超に引き上げる方針だ(図14)。太陽光発電を県内各地に広げるほか、小水力発電所を50カ所に展開する。木質バイオマス発電では燃料の供給事業を含めて100人の新規雇用を見込んでいる。

図14 「再生可能エネルギー及び省エネルギーの推進に関する基本計画」の主な目標。出典:島根県政策企画局

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2015年版(32)島根:「木質バイオマス発電が日本海沿岸へ、離島に太陽光と風力と蓄電池」

2014年版(32)島根:「日本海に浮かぶ4つの島、再エネと蓄電池による電力供給に挑む」

2013年版(32)島根:「森林率78%が生み出す木質バイオマス、日本海の風は77基の大型風車へ」

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