日本海に浮かぶ4つの島、再エネと蓄電池による電力供給に挑むエネルギー列島2014年版(32)島根

島根県の隠岐諸島では4種類の再生可能エネルギーが拡大中だ。空港の滑走路の跡地にメガソーラーを建設する一方、島内で発生する林地残材や生ごみを利用してバイオマス発電にも取り組む。さらに2種類の蓄電池を組み合わせた最先端の電力供給システムの実証事業が2015年度から始まる。

» 2014年11月25日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 隠岐(おき)諸島は本土から北へ約50キロメートルの距離にあって、高速船でも1時間かかる。4つの島に約1万5000人が暮らしているが、電力は島内で作るしかない。現在は火力発電所と小水力発電所が2カ所ずつ、さらに2004年から3基の風車で運転を続けている「隠岐大峯山(おおみねさん)風力発電所」が主力の電力源である(図1)。

図1 「隠岐大峯山風力発電所」の全景。出典:隠岐の島町役場

 この島根県の離島で、中国電力が蓄電池を使った電力供給システムの実証事業を2015年度から実施する。天候によって変動する太陽光や風力の電力を特性の異なる2種類の蓄電池で吸収して、火力や水力と合わせて安定した電力を供給する試みだ(図2)。再生可能エネルギーの導入量を増やしながら、火力発電に利用する石油の消費量を減らすことが可能になる。

図2 「ハイブリッド蓄電池システム」による技術実証事業。出典:中国電力

 実証事業に合わせてメガソーラーを建設することも決まっている。隠岐空港の以前の滑走路の跡地が未利用のまま残っていた。島根県が2つの区域をメガソーラーの用地に設定して、県内の民間企業2社に貸し付ける(図3)。発電能力はそれぞれ1.5MW(メガワット)で合計3MWになる。

 2つのメガソーラーは2015年9月から運転を開始する予定だ。年間の発電量は合わせて370万kWhを見込んでいる。一般家庭で約1000世帯分に相当する規模になり、隠岐諸島の総世帯数(約7000世帯)の15%程度をカバーすることができる。このほかにも2MWのメガソーラーの建設が別の場所で進んでいる。

図3 隠岐空港のメガソーラー建設予定区域。出典:隠岐の島町役場

 さらに中国電力グループが2MWの風力発電所を建設する計画で、合計すると8MWの太陽光と風力による電力が隠岐諸島に生まれる。小水力を含む既存の再生可能エネルギーと合わせれば11MWに拡大する。既存の火力発電所は33万kWの発電能力があることから、島全体の電力の4分の1を再生可能エネルギーで供給できる体制になる。それだけに蓄電池を使って太陽光と風力の電力を最大限に活用できる意義は大きい。

 隠岐諸島ではバイオマスの取り組みも着々と進んでいる。政府が指定する2014年度の「バイオマス産業都市」に隠岐の島町(おきのしまちょう)が選ばれて、関係省庁の支援を受けながら4種類のプロジェクトを計画中だ(図4)。

図4 「隠岐の島町バイオマス産業都市構想」の全体像(画像をクリックすると拡大)。出典:農林水産省

 そのうちの1つが木質バイオマスを利用した「里山活性化プロジェクト」である。島内で発生する林地残材や建築廃材などを粉体にして、メタンガスに転換してから発電用の燃料などに利用する(図5)。このほかに生ごみからメタンガスを生成して電力・温水・ガスを供給するプロジェクトもある。

図5 木質バイオマスを活用した里山活性化プロジェクト。出典:隠岐の島町役場

 島根県の本土側でもバイオマス発電所の建設が相次いで始まっている。東部の松江市で6MW、西部の江津市(ごうつし)では11MWの木質バイオマス発電所が、それぞれ2015年4月に運転を開始する予定だ。今のところ島根県の再生可能エネルギーは風力発電が多いが、これから木質を中心にバイオマス発電の導入量が拡大していく(図6)。

図6 固定価格買取制度の認定設備(2013年12月末時点)

*電子ブックレット「エネルギー列島2014年版 −中国編−」をダウンロード

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