エネルギーで企業城下町の未来をつくる、日本初の熱電供給プロジェクト自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2017年02月03日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]
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将来は自治体への展開も

 スマートエナジー磐田の資本金は1億円で、JFEエンジニアリングが94%、磐田市が5%、磐田信用金庫が1%の比率で出資を行う予定だ。なお、発電所の建設費用などについては基本的にJFEエンジニアリングが負担する。経産省の「地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業」などの補助金も活用する予定で、実質的なJFEエンジニアリングの投資費用は「約12〜13億円」(同社)としている。

 今後は2017年4月1日にスマートエナジー磐田を設立し、まずは電力販売のみを開始する。その後、2018年下期にガスタービン発電所を完成させ、電力と熱およびCO2の販売を始める。将来は商工業団地だけでなく、磐田市内全域に電力を熱を供給したい考えだ。さらにその先の展望として、他の自治体新電力などとの連携も視野に入れている(図4)。

図4 将来は他の自治体との連携も視野に入れる(クリックで拡大) 出典:JFEエンジニアリング、磐田市

 収益面では、設立初年度の売上高は5億円、ガスタービン発電所が稼働した後の2019年度は10億円を見込む。電力や熱、CO2の供給先との交渉を進める中で、既に10億円程度までは売り上げが見えているという。その後は発電所の稼働率向上や増設などを行い、電力や熱の供給範囲とともに2020年度には売上高を20億円まで拡大させたい考えだ。

エネルギーで地域の活性化へ

 今回の熱電供給事業は、磐田市がJFEエンジニアリングに話を持ちかけたことがきっかけでスタート。同市がこうした新たな取り組みに着手した背景には、市内の産業構造や人口動態の変化があるという。

 「磐田市は二輪・四輪企業の企業城下町という特徴があり、製造品出荷額が全国で22位、県内では2位だ。しかし産業構造や市場変化の影響もあり、近年は有効求人倍率が下がるといったことも起こりはじめている。そこで市の将来のためには、今からとにかく新しい土を耕し、種を蒔く取り組みをしていかなくてはならないと強く感じている。その1つとして着目したのがエネルギーだった。市内には多くの二次請け、三次請けを担う中小製造業も多いが、どの企業もコスト削減に苦心している。そこで従来よりエネルギーを安価に提供できる仕組みを整えることができれば、こうした市内の企業に対して貢献できるのではないかと考えた」(岩田市長の渡部氏)

 一方、JFEエンジニアリング 代表取締役 副社長の吉田佳司氏は「2015年の夏から磐田市と今回の事業の計画を相談し始めた。本来、こうした事業を展開するには非常に時間がかかるが、今回丸2年かからずに実行にまで移せた背景には、磐田市の先見性、リーダーシップ、熱意、尽力、さらには地元企業の理解があったからだと感じている」と述べる。

 また、吉田氏は「日本のエネルギー事業は大きな転換期を迎えているのではないかと考えている。これまでのような大規模な発電所と大きなグリッド(電力網)という組み合わせから、エネルギーの地産地消を行う分散型の流れにシフトしつつあるからだ。今回の事業はそういった先例の1つになると考えている。また、災害や地球温暖化対策の他、地域創生の1つの手法にもなるのではないかと期待している。われわれ自身も磐田市の市民になったつもりで、地域の活性化のために社を挙げて取り組んでいきたい」と意気込みを語った。

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