新設の水力発電所で最大級、2万世帯分を超える電力自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2017年02月20日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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国から環境アセスメントを求められる

 大規模な水力発電所を建設する場合には、発電能力に応じて事前に環境アセスメント(環境影響評価)が義務づけられている。3万kW以上の第1種事業では必ず環境アセスメントを実施しなくてはならない(図4)。「新姫川第六発電所」のように2万2500kW以上の第2種事業に対しては、建設計画をもとに経済産業省が必要性を判断する。経済産業省は黒部川電力に環境アセスメントを要求した。

図4 環境アセスメントの対象になる発電設備。出典:環境省

 環境アセスメントが必要になった理由として、取水地点から発電所まで5キロメートル以上にわたって川の水量が減る問題が大きい(図5)。減水区間に生息する魚類や川底の生物に影響を与える懸念があるためだ。経済産業省は水量と水質を調査して影響を評価するように求めている。

図5 水力発電所の新設による川の減水区間。出典:黒部川電力

 加えて山の中にトンネルを掘削して導水路を埋設する大掛かりな工事がある(図6)。内径が4メートル以上の鉄筋コンクリート製の導水路を4.6キロメートルの長さで造成する予定だ。このほかの工事を含めて合計で20万立方メートルを超える大量の土砂が発生するため、周辺に3カ所の土捨て場を整備しなくてはならない。工事の規模の大きさの点からも環境アセスメントは不可欠と考えられる。

図6 水力発電所の全体の構造。出典:黒部川電力

 黒部川電力は3段階に分かれる環境アセスメントの手続きのうち、第2段階にあたる「準備書」を2月15日に経済産業大臣に届け出た。手続きが順調に進めば、約1年半後の2018年7月に工事に着手する。発電設備と土捨て場の工事を中心に4年弱の期間を想定して、2022年4月に運転を開始できる見通しだ。

 水力発電所を新設すると再生可能エネルギーの電力を大量に増やせるが、実現までの道のりは平たんではない。何よりも環境に悪影響を及ぼさないことが重要だ。

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