阿武隈エリアの風力発電プロジェクトが計画どおりに進めば、日本で有数の再生可能エネルギーの拠点になる。運転中の2カ所の風力発電所では、発電能力2000kWの大型風車が合計で37基を数える(図5)。さらに仮事業者に決まっている3社の計画が144基にのぼる。新規で公募する事業者を加えれば、200基を超える規模に拡大することは確実だ。
政府は福島県内の再生可能エネルギーを最大限に拡大する「福島新エネ社会構想」を2016年9月に策定した。その中で阿武隈エリアと太平洋沿岸部の双葉エリアで風力発電を拡大させるために、送電線の増強計画を盛り込んだ(図6)。2017年度に100億円の予算を投入して、送電線の整備に向けた調査を開始する方針だ。
東北地方では青森県と秋田県を中心に風力発電の導入量が拡大して、送電線の容量不足や電力の需給バランスの問題が浮上している。今後も風力発電の導入を増やすためには、送電線の増強と需給調整システムの整備が欠かせない。福島新エネ社会構想を通じて、東京オリンピック・パラリンピックを開催する2020年をめどに計画を進めていく。
復興を推進する福島県では2040年に再生可能エネルギーの自給率を100%以上に高める目標を掲げている(図7)。2011年度に21.9%だった自給率を2018年度に30%へ、2020年度に40%まで引き上げることが当面の目標だ。
震災後の2013年度から「再生可能エネルギー先駆けの地アクションプラン」を開始して、太陽光発電を中心に導入量を増やしてきた。2016〜2018年度の第2期では太陽光発電と合わせて風力発電を大幅に伸ばす(図8)。阿武隈エリアで計画中の大規模な風力発電所が運転を開始するのは2020年代に入ってからだが、自給率100%を達成する2040年に向けて長期的に風力発電を拡大できる体制を整える。
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