続いて高砂熱学工業、森松工業、日野自動車、産総研は、開発した蓄熱材の充てん槽(蓄熱ユニット)を搭載できる可搬コンパクト型蓄熱システムを開発した。蓄熱ユニットの蓄放熱性能の指標となる水吸脱着速度や熱伝達率は、蓄放熱時の乾燥・湿潤空気の風量を増やすことで向上するが、同時に圧力損失が大きくなり、稼働エネルギーも増大してしまうといったトレードオフの関係がある。今回は蓄熱ユニット内の風量分配も含め、圧力損失1kPa以下と蓄熱密度500kJ/l以上を同時に達成できる充てん槽構造などの仕様を確立した。さらに、中型トラックでの運搬を可能とするため、蓄熱ユニットの軽量化も図った。
オフライン熱輸送システムの検証試験では、3トンのハイブリッドトラックに搭載した蓄熱ユニットに、日野自動車「羽村工場」の塗装工程にある排気脱臭装置から回した100度程度の廃熱を蓄熱した後、そのままトラックで蓄熱ユニットを他の工場に移送し、生産プロセスなどの熱源として利用する。
熱利用先となる「新田工場」では、機械加工温水洗浄機への温水供給および樹脂部品原材料のペレット乾燥機への乾燥空気供給の熱源として廃熱を利用する。実証試験の期間は2017年3月13〜23日までを予定している。
実証試験では温水供給や乾燥空気供給での廃熱利用性能を評価するだけでなく、オフライン熱輸送システムとしての経済性評価を目的に、輸送距離あたりの輸送時間や燃料消費量といった運用データも収集する。
今回開発した蓄熱システムは、こうしら熱輸送システムだけでなく、定置型のシステムとしても利用できる。そこで、高砂熱学工業の技術研究所内に定置型システムを用いた冷温水供給システムを構築し、運転データを取得する。
今後はこれらの取得データをもとにシステムシミュレーションモデルを開発し、設計ツールや導入先への提案ツールとして生かしていく考え。2017年6月までにシステム評価を行い、その後、市場展開を目指す方針だ。
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