電力量を自動読み取り、中国電力が「タブレット×AI」で業務効率化IT活用

中国電力と富士通は、発電所や変電所の電力量計の確認作業に、タブレット端末を活用したシステムを実証導入した。端末のカメラで電力量計を撮影すると、表示されている数値を自動で認識し、記録することができる。AI技術を活用して認識精度を高めた。

» 2017年03月31日 09時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 富士通と中国電力が発電所や変電所の巡視業務の効率化を目的に実施したIT活用実証で、成果が出た。電力量計に表示された数値を、タブレット端末のカメラを利用して自動で読み取るシステムを導入し、性能を確認できたという。

 各発変電所の所内電力量の記録は、作業員が電力量計の数値を目視と写真撮影で記録していた。今回行った実証実験は、こうした属人的な作業の効率化を目指したものだ。過去に画像認識技術の活用を検討したが、天候や電力量計の設置環境などにより数値の認識が正確にできないといった問題や、アナログ式の電力量計の場合、数値の回転度合いがさまざまであるため、認識精度が低いなどの課題があった。

 今回新たに行った実証実験は、富士通と同社グループ会社のPFU、さらに中国電力のグループ会社であるエネルギア・コミュニケーションズと共同で実施した。

 用いたのはPFUが開発した「メーター読み取りシステム」だ。メーターにタブレット端末をかざすと自動的に撮影を行い、表示されている数字を認識して電力量を記録することができる。認識精度を高めるために、AI(人工知能)技術の1つであるディープラーニング(深層学習)を活用している。学習データを追加することで、認識できるメーターの種類を拡張することも可能だ。

撮影のイメージ 出典:富士通

 このシステムを2016年10〜12月の3カ月間、中国電力が管理する6カ所の変電所の記録作業に導入した。その結果、アナログ式およびデジタル式電力量計のいずれも、高い認識精度を確保し、電力量計の読み取りにおいて有用であると確認できたとしている。

 今後はメーターの読み取り画像データの蓄積を進め、ディープラーニングによる認識精度のさらなる向上を目指す。中国電力では将来、電力量の記録業務にこのシステムを活用し、作業の自動化を図る考え。富士通とPFUはシステムの対象となるメーターの種類を拡張し、発電所や変電所だけでなく、ビル、工場などにおける各種メーター読み取り業務も含めて実用化を目指す方針だ。

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