風力で作るCO2フリー水素チェーン、大型実証が本格始動自然エネルギー(1/2 ページ)

製造から利用まで、再生可能エネルギーを活用したCO2フリー水素サプライチェーンの構築を目指す実証が、神奈川県で本格的に始動した。風力発電の電力で製造した水素を、物流倉庫や卸売市場に導入した燃料電池フォークリフトで利用する。約1年かけて、システムとともに実用化に必要なコストの削減余地などを検証していく。

» 2017年07月14日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 風力発電を活用したCO2フリーな水素サプライチェーンの構築を目指す実証が、神奈川県で本格的にスタートした。神奈川県、横浜市、川崎市と、トヨタ自動車、岩谷産業、東芝、豊田自動織機、トヨタタービンアンドシステム、日本環境技研が、環境省委託事業「平成27年度 地域連携・低炭素水素技術実証事業」として行うもので、CO2フリー水素の利用によるコストの試算やCO2削減効果を検証していく。

 実証では横浜市の沿岸部にある「横浜市風力発電所(通称:ハマウィング)」の敷地内に、水を電気分解して水素を製造する装置と、水素の貯蔵システムを設置する。貯蔵した水素は圧縮装置を利用して専用車両に充填(じゅうてん)し、京浜臨海部の市場や倉庫に運搬して、燃料電池フォークリフトの燃料として使用する。

実証の概要 出典:トヨタ自動車
「ハマウィング」に導入するシステムの概要(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車

 ハマウィングは、住民や協賛企業の出資によって設立された風力発電所で、2007年3月から稼働を開始している。Vestas社製の高さ78メートル、定格出力1980kW(キロワット)の風車を利用していて、設備稼働率は12.4%、年間発電量は約210万kWh(キロワット時)を見込んでいる。

「ハマウィング」の外観(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車

 風力発電の発電量は天候によって大きく変動する。そこで電力が少ない場合には、蓄電池から各設備に電力供給し、安定して水素を製造・供給できる体制を整えた。ハマウィングの発電量が多い時は蓄電池に充電を行い、発電量が少ない時には蓄電した電力を水電解装置や水素圧縮機に放電する。

 なお、蓄電地はハイブリッド車の使用済みバッテリーを活用している。ニッケル水素電池を180個組み合わせており、150kWh(キロワット時)の蓄電能力がある。

蓄電システムの外観(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車
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