ソーラーシェアリングの仕組みの概要は以下の通り。
営農という点においては、農業委員会で認められる適切な遮光率下での営農計画を立てることや、金融機関から融資を受けるにあたって特に懸念材料とされる長期間の安定した営農体制の確保など、クリアすべき点が多い。われわれは、農業法人を立ち上げ、複数人でその農地の耕作を行うことなどで安定的に耕作を維持できる仕組みを提供してきた。
また、発電設備の下で栽培する作物については、これまでに以下のような事例がある。
このように多くの作物の栽培実績が積み重なってくる中で、それぞれに適した設備を設置すれば、作物の収穫量はほぼ問題ないことが分かってきている。なお、多くの作物に適用できるものとして横浜環境デザインが推奨する遮光率は、ソーラーシェアリング発案者である長島彬氏の提唱する、おおむね33%以下である。
ソーラーシェアリングの最も大きなメリットは、農業者自身が発電事業に取り組むことで売電収入が農家所得にプラスされることである。農林水産省も今年に入って営農型太陽光発電の事例集を公表するなど普及に積極的な姿勢を見せている。
下記は参考例になるが、複数の発電設備を持つことで年間100万円ほど現金収入を増やすことができれば、営農継続の弾みになると考えている。
全国平均年間農業所得 | 5.9万円/(1反=10a=1000m2) |
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全国平均耕地面積 | 235a/戸(2万3500m2/戸) |
太陽光発電年間売電収入 | 100.8万円/反 |
スリムモジュール(24セルタイプ):110W(1.953m×0.35m)→0.16kW/m2
遮光率30%:1000m2×0.3=300m2
平均発電量/反:0.16kW/m2×300m2=48.0kW
売電収入:21円/kWh(売電価格)×48.0kW×1000h(年間稼働時間)=100.8万円
ただし、ソーラーシェアリングは単に太陽光発電システムを設置し売電できればいいというわけではないことを、改めて指摘しておきたい。農業と太陽光発電を両立させることが本来の目的である。これまでの設置事例では野立ての太陽光発電設備用の架台をそのまま流用するなど、農作業を行うことを考慮していない例も散見された。そこで、農林水産省は太陽光パネルの下に最低でも高さ2m以上の農作業空間を確保するよう通達している。弊社で採用している架台は、JIS Q 8955に準拠した設計のアルミ架台で、地表面からモジュールまで約4mの高さがある。設計・施工もトラクターなどによる農作業が行いやすいよう配慮している。
ソーラーシェアリングが認められた当初は、農水省の通達で「簡易で撤去が容易な架台」という前提だったため、DIYのしやすさも相まって単管で作られた設備も多く存在している。しかしながら、台風によって架台がダメージを受ける事例も生じている。下部で農作業を行うという特殊性も考慮して、弊社では強度が担保できるアルミ架台を使用した上で、トラスで強度を出しながらも、基礎部分に浮沈防止ベースを入れるなど、耐久性の強化を行っている。
また、農業の収穫量を下げないためにも、遮光率だけでなくなるべく効率的に設備の下の農地を活用できるような設計を図り、施工についても農閑期のうちに終えられるような配慮が重要になる。
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