農業の新しいビジネスモデルに、ソーラーシェアリングのススメ自然エネルギー(1/3 ページ)

農業の新しい収益源として注目が集まっている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電事業)」。農業と太陽光発電を両立させるソーラーシェアリングを行うためには、どのような点に気をつければ良いのだろうか。複数の施工実績を持つ横浜環境デザインが解説する。

» 2017年08月07日 07時00分 公開

 日本国内の農業では高齢化が進んでおり、農業就業人口192万人の平均年齢は66.8歳である。さらに現在の65歳以上の農業者125万人が今後20年間でリタイアしていくと想定されている。一方、年間の青年新規就農者(44歳以下)は2万人で、そのうち新規参入者は2000人前後にとどまるなど、人手不足や後継者問題、経済的な課題を抱える農家も多い。

 そこで国内での太陽光発電の普及にとともに、「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電事業)」に注目が集まっている。ソーラーシェアリングとは、太陽の恵みを太陽光発電システムによって作った電気と農作物の栽培で分け合う(シェアする)という考え方に基づき、農地で植物の生育にとって必要な太陽光の日射量を保ちながら、農業が維持される限り安全で安定した収入源として太陽光発電を運用する仕組みのことである。農業所得だけではなかなか経済的に自立ができないと考えている農業者に対し、太陽光発電の電力を売電することで+αの収入を確保し、所得の向上に寄与できるというメリットがある。

千葉県匝瑳市で横浜環境デザインが施工した50kWのソーラーシェアリング 写真提供:横浜環境デザイン

 一般的な太陽光発電は、2012年に「再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)」がスタートして以降急速に普及が進んだが、それに伴い、一部では問題も出てきている。例えば、大規模に山を切り開いて設置することによる周辺環境への影響や、農地の完全転用による食料生産基盤の喪失などである。太陽光発電所に最適な土地も減少する中で、今後どのような場所で、どのように太陽光発電を広げていくかは1つの課題となっている。

 現在、国内の農地面積は関東平野の約2.7倍に相当する450万ha(ヘクタール)の広さがあるが、そのうち約42.3万haは、農作物が1年以上作付けされずに放置されている「耕作放棄地」となっている。東京都の面積の2倍に相当する面積が農地として生かされていない状況にある。農業の抱える問題を解決するためにも、利用されていない耕作放棄地を有効活用し、自然エネルギーの活用と農業の共存を図るソーラーシェアリングを普及していくことには意義があると考えられる。

 ソーラーシェアリングは、農林水産省によって設置が認められるようになった2013年から、事例が徐々に増えてきた。2015年度には年間374件が許可され、累計の導入件数は775件となっている。2016年度中には累計許可件数が1000件に達したと予測される。

営農型太陽光発電の普及状況。数字は農林水産省の調査結果によるもの 出典:横浜環境デザイン
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