雑草対策に使うその前に、太陽光発電事業者が知っておきたい農薬知識基礎から学ぶ太陽光発電所の雑草対策(6)(1/2 ページ)

日本でも稼働から数年が経過する太陽光発電所が増える中、運用課題の一つとなっている雑草対策について解説する本連載。今回は雑草対策に利用される、農薬についての基礎知識について解説する。

» 2018年10月22日 07時00分 公開

1.農薬とは?

 農薬を一言で表現すると、「人の嗜好(しこう)、目的に合わせて作られた人為的な農作物(樹木・農林産物も含む)」を「病害」「虫害」「雑草害」から保護・防疫し、農作物の生理機能の増進・抑制するための薬剤や天敵です。

 ちなみに、ドラッグストアやホームセンターで販売されている、ハエ、蚊、ゴキブリ、ハチなどの害虫防除薬剤は人への害を防ぐことを目的としているので、農薬ではありません。

 次に農薬について、一般的に読者の方があまりご存知ない、または、気にされてない3つの押さえるべきポイントをQ&A形式で説明したいと思います。

Q1.ホームセンターやインターネットなどで販売している除草剤は“農薬”ですか?

 この質問は、本当に多くの方から聞かれます。質問に対する返答は、「農薬の除草剤」と「農薬でない除草剤」の両方が販売されており、一般的には「農薬ではない除草剤」の方が安く販売されています。

 両者は、製品のラベルや表示画面に「農林水産省登録番号」があるかないかで見分けられます。「農薬の除草剤」の場合、「農林水産省登録 第18×○△号(例)」と必ず記載されています。また、このラベルには使用者が守るべき事や注意事項が記載されているので、必ず読んで、間違わないように使用・管理してくださいという説明が付記されています。

Q2.「調べると薬剤の成分が同じなのに、なぜ価格に差があるのですか?」

 Q1に対する回答の次に、必ず聞かれるのがこの質問です。これは「農薬取締法」に基づいた「登録制度(=農林水産省に登録された農薬だけが製造、輸入および販売できる仕組み)」の有無だけです。

Q3.「登録の有る・無しで、何が違うのですか?」

 この質問は発電事業者にとって、とても重要な内容です。回答としては、次の1点の違いしかありません。

 人が病気などで使用する医薬品は、厚生労働省が医薬日品医療機器等法で規制・管理しています。それと同じで、農薬は農林水産省が登録を認めた薬剤になります。農薬には販売、使用および廃棄の規制(農薬取締法や廃棄物の処理および清掃に関する法律)が適用されます。そのため、登録があるかないか(=農薬かそうでないか)で、使い方や破棄の仕方にも大きな違いが生まれます。

 使用にあたっては、農薬取締法だけでなく、水質汚濁防止法、環境基本法、食品衛生法他が適用され、容器を捨てるのにも廃掃法(廃棄物の処理および清掃に関する法律)が適応されるなど、厳しく規制されています。

 農薬はこのように製造、流通、使用、廃棄までルール(規制)がありますが、そのぶん発電事業者の方や、業者の方の管理項目が明確で、こうしたルールさえ守れば、安全に利用できるかつ管理しやすいというメリットがあります。特に評価ガイドなど、管理項目が多くなった発電事業者にとってのメリットは多いと思います。散布作業、ドリフト(飛散)対策、作業者の安全管理、残った農薬の処分、農薬のケースの廃棄などが管理しやすくなるため、近隣関係でなく作業者の安全面など、第1回「急増する太陽光発電の雑草トラブル、知っておきたいリスクと対策」に書かせていただいたようなリスクに対しても、より安全に対応することができます。

 私は太陽光発電所(=非農耕地)は農作物ではありませんが、こうした理由から近隣との良好な関係構築・維持と安全管理の両面で、農薬を使用する方が良いと判断しています。

 これ以上に発電事業者にとって重要なポイントは、農薬取締法の押さえるべき点を知り・理解し、発電所の運営管理、保守・保全にうまく取り込むことです。これはまさに本連載の第4回で紹介した「太陽光発電所版IPM」の重要な一つの対策であると考えています。

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