太陽光発電と農業を両立する手法として、近年、国内で大きな期待と注目を集めている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回はソーラーシェアリングを巡る日本の政策動向について解説する。
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)が農林水産省によって制度化されてから丸5年以上が経過し、具体的な政策上の位置づけを図る動きが活発化してきています。本稿では、我が国の政策の中でソーラーシェアリングがどのように位置づけられ、今後どういった方向性での普及を目指しているのかについて解説します。
制度としてソーラーシェアリングが明確に位置づけられたのは、2013年3月31日に農林水産省が発出した通知「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」(24農振第2657号)が発端です。この当時、国内では既に十数件のソーラーシェアリング型太陽光発電設備が設置されており、農林水産省はそれらの既存事例を調査した結果からこの通知を出しました。
通知発出直後の2013年度には、全国で97件のソーラーシェアリング設備が農地の一時転用許可を受け、その後毎年許可件数は増加傾向にあります。2017年3月末時点では、その件数は累計1182件(再許可事例を除く)となり、2016年度に新規許可を得たのは409件となっています。
一方で、同じく2017年3月末時点に設備認定を受けていた事業用太陽光発電の件数は46万4811件あり、仮にソーラーシェアリングの全てが出力10kW(キロワット)以上の全量売電だったとしても、事業用太陽光発電全体に占める割合は0.25%でしかありません。しかし、この全体から見ればわずかな件数でしかないソーラーシェアリングが、大きな注目を集めはじめます。
ソーラーシェアリングにとって大きな転機となったのは、2017年3月の「匝瑳メガソーラーシェアリング第一発電所」(千葉県匝瑳市飯塚)の竣工です。3.2ha(ヘクタール)の耕作放棄地を再生し、ソーラーシェアリングによる売電収入を地域主導で活用して、農業や教育そして村づくりなど幅広い地域の課題解決に投じるモデルは、当時国内のソーラーシェアリングで唯一の取り組みでした。2017年4月3日に行われた落成式には、プロジェクト関係者や地元関係者約150人に加えて、小泉純一郎氏、細川護熙氏、菅直人氏、歴代総理大臣が列席するという前例のない大きな自然エネルギー事業の式典となりました。
この落成式の様子は、同日以降多くのメディアに取り上げられ、ソーラーシェアリングの認知度を向上させるともに、農地における自然エネルギー事業が地域活性化や農業振興に資するモデルとなることが、広く知られるきっかけとなりました。これを契機に、ソーラーシェアリングを巡る政策は大きく変化していくことになります。
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