農業の新しい収益源として注目が集まっている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電事業)」について解説する本連載。今回はソーラーシェアリングの持続的な発展を実現するために欠かせない、次世代の人材育成について考察します。
まだまだ一般的な認知度の向上に課題がある「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」ですが、大学の研究者や、次世代を担う学生たちにはどの程度認知されているのでしょうか? 作物の育成手法など、研究の余地が多く残されているソーラーシェアリングにとっても、次世代を担う人材の育成は重要なポイントです。
ここ3年ほどで、学部の卒業論文や大学院の修士論文などでソーラーシェアリングを取り上げたいという相談が私のところにも舞い込むようになりました。年平均で3〜4件ほど問い合わせがあります。では、「大学でのソーラーシェアリングの研究は盛んなのか?」と思い、参考情報として国立情報学研究所が運営する学術情報データベースCiNiiで検索してみした。その結果、「営農型太陽光発電」は5件、「ソーラーシェアリング」では15件程度の研究論文やレポートが登録されています。ただ、CiNiiは学術誌や学会などで報告されない限り、卒業論文や修士論文などは収録されませんから、このデータだけは大学生・院生レベルでどの程度の関心が持たれているかは伺えません。
ソーラーシェアリングの普及に向けて、特に不足しているのが太陽光パネルの遮光環境下で農作物がどのように育つのかという研究です。過去に、農地の宅地化が進むことで住宅などの影がかかることによる農作物の生育などに関する研究は行われていますが、ソーラーシェアリングのように農地の上空一帯に太陽光パネルが設置されるという状況はもちろん想定されたことがありません。現状、営農計画を立てる際にはさまざまな学術研究データや専門家の見解を参考にしていますが、実際の栽培環境でのデータ取得を通じ、よりしっかりとした知見を獲得・蓄積していく必要があります。
私も千葉大学や三重大学と、自社のソーラーシェアリング設備下での農作物の生育に関する研究を行ってきましたが、さらに同様の研究を拡大していくためには、大学や農業試験場などの研究者に取り組んでもらうことが不可欠ですし、それを将来的に担っていく学生・院生に関心を持ってもらうことも重要です。
実際にソーラーシェアリングが設置されている圃場(ほじょう)に学生を招待したり、匝瑳市の発電設備のように「収穫祭」といったかたちイベントを行うことで足を運んでもらったり、という取り組みはしていますが、最も手っ取り早いのは大学内に小規模でも実際の設備を導入してしまうことです。そんな中で、2019年3月に、千葉県の千葉商科大学キャンパス内に、ソーラーシェアリングの実験設備が設置されました。
既に報道されていますが、千葉商科大学は電気だけではなくガスも含めた消費エネルギーの総量を発電量と同量にする「自然エネルギー100%大学」の達成を2020年度までに行うと宣言しています。それに関連した取り組みとして、このソーラーシェアリング設備下でブドウを栽培する「CUC100ワイン・プロジェクト」を開始しました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.