太陽光発電と農業を両立する手法として、近年、国内で大きな期待と注目を集めている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回は今後の国内におけるソーラーシェアリングの普及に関係しそうな、政府が掲げる「地域循環共生圏」について解説します。
本連載の第4回でソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の政策について取り上げた際、環境政策におけるソーラーシェアリングの制度導入が本格化し始めたことに言及しました(第4回「数年で大きな変化、ソーラーシェアリングを巡る政策動向」)。その中で、「これからもっと普及促進のための施策がとられる」と書きましたが、2019年になって環境政策におけるソーラーシェアリングの重要性がさらに増してきています。
今回は、こうした背景を踏まえながら、我が国のSDGsへの取り組みとの関わりも深く、今後ソーラーシェアリングが大きく関係するであろう、政府が提言する「地域循環共生圏」について取り上げます。
地域循環共生圏は、2019年6月7日に閣議決定された環境省の「令和元年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」の第1部第1章「地域循環共生圏の創造」で紹介されています。2018年に策定したばかりの第五次環境基本計画より先に白書で取り上げるほど、環境省が政策の中で重要視している概念です。その第1章の冒頭では、この地域循環共生圏について下記のように言及されています。
各地域がその特性を活かした強みを発揮し、地域ごとに異なる資源が循環する自立・分散型の社会を形成しつつ、それぞれの地域の特性に応じて近隣地域等と地域資源を補完し支え合う「地域循環共生圏」を創造していくことが求められます。
地域循環共生圏という言葉から、地域の中での資源・経済循環と地域間での資源・経済循環と、地域相互の共生関係といったイメージが想起されますが、下記の概念図にあるように都市と農山漁村の補完的な関係性が特に分かりやすいです。
この概念図で循環している、人材・資金・自然資源など地域に存在する資源を見ていくと、これまでの日本における経済成長の中では、都市が農山漁村から人材や自然資源を吸い上げてきた構図が背景に見えてきます。人材では、若者を中心に地方から都市への人口移動があり、近年でも1995年以降は東京・関西・名古屋の三大都市圏に対する地方からの人口流入が続いています。生活に欠かせない自然資源も、水源涵養(かんよう)を農山村に頼り農産物を始めとする食料などの供給も受けて来た中で、昨今では再生可能エネルギー発電の拡大で電気エネルギーも農山漁村から都市へと送られています。ここに、地域循環共生圏を考える上での一つのジレンマが浮かび上がります。
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