設置条件が分からなくても大丈夫、東芝が太陽光発電量の予測技術を開発太陽光

東芝はこのほど、独自のAI(人工知能)を活用した高精度な太陽光発電量の予測技術を開発したと発表した。太陽光発電設備の性能や設置条件が不明な場合でも、過去の同設備の発電実績をもとに性能や設置条件を推定し、発電量を高精度に予測できるという。

» 2019年07月24日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 東芝はこのほど、独自のAI(人工知能)を活用した高精度な太陽光発電量の予測技術を開発したと発表した。太陽光発電設備の性能や設置条件が不明な場合でも、過去の同設備の発電実績をもとに性能や設置条件を推定し、発電量を高精度に予測できるという。従来の技術より、予測誤差が約9.8%改善されたとしている。

 近年、電力小売自由化や世界的な脱炭素への動きに呼応して、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入が拡大している。一方でこうした再生可能エネルギーは天候によって発電量が変動するため、系統安定化のためにも高精度な発電量予測技術の開発が進められている。また、住宅などに設置した住宅太陽光発電の余剰電力を効率的に活用するためにも、発電量の予測は重要なポイントだ。

 従来の一般的な太陽光発電量予測技術は、太陽光発電の設置場所の気象予測値を参照し、太陽光発電設備の工学モデルを組み合わせて発電量を予測するか、気象条件が近い過去の実績値を用いて予測する手法が用いられている。

 東芝は、気象予測とAIを融合した高精度な電力需要量予測技術に取り組んでおり、今回開発した太陽光発電量予測技術は、既に同社が独自に運用する数値気象予報モデルを用いた予測システムから得られた発電量に関係するデータ(日照強度、気温、風速、降雪、太陽光の反射率など)を活用することで説明性の高い予測モデルが構築できることが特徴だという。特に、発電量への寄与が高い日照強度については、予測値からAIへ実測値をフィードバックすることで、予測誤差の傾向を学習し、予測精度を高めている。さらに、太陽光発電設備の性能や設置条件が不明な場合でも、工学モデルとスパースモデリングやアンサンブル学習などの機械学習を融合して、過去の実績データから太陽光発電設備の特長や設置条件を推定するAIを開発し、発電量の予測誤差を改善することができたという。

開発した技術の内容 出典:東芝

 なお、この技術は東京電力ホールディングスと北海道電力が共同開催した、太陽光発電量予測技術コンテスト「PV in HOKKAIDO」において、応募約70団体の中で、予測精度と実用性の面で高評価を受け、グランプリを受賞している。

 東芝がグランプリを受賞したコンテストでは、北海道電力が保有する過去の太陽光発電量実績データを用いて、指定された太陽光発電所の発電量を13カ月の期間、30分単位で予測し、予測精度や予測モデル、実用性、発展性が審査された。同社の予測技術は、独自運用システムから必要な気象情報を抽出して従来の工学モデルと機械学習を組み合わせたことや、予測に必要な要素を自社技術で実現していること、予測モデルの入力データを工夫して精度向上が期待できることなどから、精度と実用性、発展性の面で総合力が高いと評価されている。

 今後、東芝では実績データの蓄積や気象予測値の種類を増やしてAIに学習させることで、さらなる予測精度の向上をすすめる。また、発電量予測技術ととともに、電力事業者の需給運用を支えるシステムやサービスへの導入を目指すとしている。

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