重要性を増す「太陽光発電事業の評価ガイド」、FIT認定の取り消し回避やセカンダリー市場の指標にも太陽光(1/3 ページ)

策定から1年が経過した「太陽光発電事業の評価ガイド」。昨今問題となっている太陽光発電の安全性に関するトラブルの増加や、セカンダリー市場の盛り上がりを受け、その重要性は増している。本稿では評価ガイドの策定の狙いとその意義を改めて整理する。 

» 2019年08月26日 07時00分 公開
[廣町公則スマートジャパン]

 太陽光発電の健全な普及と、今後拡大が想定されるセカンダリーマーケットの活性化を図るため、2018年6月に「太陽光発電事業の評価ガイド」が策定された。太陽光発電協会が事務局を務め、再生可能エネルギー保全技術協会など関連団体協力のもと、電気工学・金融・法律・不動産など多方面の知見を集めてまとめられた。

 昨今、設置工事やメンテナンスの不備による安全面での不安や、景観や環境への影響などをめぐる地元とのトラブルが急増している。策定から1年を経て、評価ガイドの必要性はますます高まっているといって良い。2019年7月に開催された「PV2019太陽光発電フォーラム」(主催:太陽光発電協会主催、会場:パシフィコ横浜)でも、評価ガイドの策定に携わった太陽光発電協会政策推進部長の長峯卓氏と再生可能エネルギー保全技術協会理事長の筒井信雄氏が講演を行い、注目を集めていた。両氏の講演内容をベースに、改めて、評価ガイドの狙いと意義を整理する。

太陽光発電協会政策推進部長の長峯氏/再生可能エネルギー保全技術協会理事長の筒井氏

事業リスクと資産価値が見えてくる

 太陽光発電業界はこれまで、事業者団体である太陽光発電協会を中心に、「保守点検ガイドライン」や「設計ガイドライン」など各種自主ガイドラインの策定を行ってきた。ただ、これらは主に太陽光発電の“設備”を中心とした“技術的”なマニュアルであり、発電事業全体の適正さを担保するものではなかった。

 一方、評価ガイドは、太陽光発電所の“事業”としての適正さを洗い出すものとなっている。発電設備関係だけでなく、土木・構造、土地・権原、法令手続きについてなど、対象領域は多岐にわたる。評価ガイドにしたがって発電所をつくり、運営していけば、太陽光発電事業の適正化も自ずと図られるようになっているのだ。既に発電所を運営している事業者は、評価ガイドを活用することで、発電所の現状(リスク・資産価値等)を正しく理解し、修繕や保守点検のあり方を見直すきっかけにすることもできる。

評価ガイドの考え方

 また、評価ガイドは、既存の太陽光発電所の査定にも大いに役立つ内容となっている。中古太陽光発電所の売買に際して、その発電所の価値を判断する客観的指標として用いられることが想定されているのだ。これにより発電所売買の透明性が向上し、セカンダリーマーケットの活性化(再投資の促進)、適正化にもつながるものと期待される。評価ガイドは、新設から売買まで、それぞれの局面において、太陽光発電事業の適正さを評価するためのガイドなのである。

 「とくに、47万件(12GW)を数える低圧発電設備(10kW〜50kW)は、個人所有の比率が高く、発電事業者が事業運営や売買に関する十分な知識を有していない場合も多い。評価ガイドは、こうした発電設備についても、長期安定電源の一翼を担うべきものと考え、その適正化を促す内容となっている」(長峯氏)という。

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