日本政府が世界に表明した環境戦略に、ソーラーシェアリングはどう織り込まれたか?ソーラーシェアリング入門(18)(2/2 ページ)

» 2019年08月21日 07時00分 公開
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日本の農産業の未来を「守る策」としての期待も

 さらに、地産地消型のエネルギーシステム構築に触れた部分では下記のような言及があります。

 農山漁村が豊富に有する再生可能エネルギーを最大限活用し、地域の活力向上や持続的発展に結びつけるため、地域エネルギー企業の導入や、ビレッジ・エネルギー・マネジメント・システム(VEMS)を含めた地産地消型のエネルギーシステムの構築を推進する。営農型太陽光発電については、営農の適切な継続を通じて農地の有効活用が図られるとともに、荒廃農地の再生や条件不利地域での営農や定住を下支えし、地域の活性化に資する取組を進める。

 ここでは、「荒廃農地の再生や条件不利地域での営農・定住を下支え」するという点に目が行きますが、何より「営農の適切な継続」こそが営農型太陽光発電の最も重要なポイントであることは言うまでもありません。さらに言えば、国内の農業従事者数が年々大きく減少していく中で、今後は荒廃農地の再生ではなく優良農地の保全という視点こそがより重視すべきものになると考えられます。農業経営が割に合わないということ以上に担い手の不足は深刻化しており、もはや我が国の農業は優良農地という最終防衛ラインをどのように死守するかにかかっていると言えるでしょう。そこに、直接的な農業者の収益向上が図れる営農型太陽光発電が、大きなてこ入れ策として機能してくるはずです。

高まる営農型太陽光発電への期待

 これまで営農型太陽光発電の政策への導入として、2017年の「未来投資戦略」や、2018年の「第5次環境基本計画」の重点戦略における位置づけなど、さまざまな政府計画の中でその活用が言及されるようになってきました。再生可能エネルギーの主力電源化が進む中で、FITによって爆発的に普及した地上設置型の太陽光発電について言及されることはほぼなくなりつつある中、営農型太陽光発電が個別に施策として取り上げられるというのは、農業振興への貢献も含めたその社会的意義の高さが評価されつつあると言えます。

 今回、パリ協定の達成に向けた長期戦略に営農型太陽光発電が導入されたことは、アジアを中心に世界中で営農型太陽光発電への注目が高まる中で、目下その普及が先行している日本の姿勢を国際社会に示すことにもつながりました。今後は、更なる普及拡大と研究開発などを通じ、地域の農業振興に資するモデルを作り上げていくことで、世界的な営農型太陽光発電の普及にも貢献していくことが出来るでしょうし、その中で我が国が主導的な役割を果たせるかどうか、まさに正念場に立っています。

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