昨今注目が集まっている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電事業)」について解説する本連載。今回は日本政府がFIT制度の抜本的な見直しの検討をすすめる中、そうした“ポストFIT時代”におけるソーラーシェアリングの可能性について解説します。
2021年度のFIT制度の抜本的見直しに向けて、経済産業省・資源エネルギー庁の委員会などで議論が重ねられています。8月5日に開かれた再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会の第17回会合では、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた同小委員会での検討と中間整理(第3次)(案)が整理されました。いわゆる、“ポストFIT”の議論が進んでいます。
中間整理案では、FIT制度の抜本見直しに向けた議論の内容として、「1.電源の特性に応じた制度の在り方」「2.適正な事業規律」「3.次世代ネットワークへの転換」の3つが軸として挙げられています。この議論の中では、FIT制度を含めた政策措置の在り方も議論されていますが、全体として再生可能エネルギーを普及させていく“手段”の話に終始している印象を受けます。再生可能エネルギー発電促進賦課金による国民負担の増加には再三再四にわたって言及されている一方で、導入拡大による社会的な便益の定量的評価などに関する議論が全くないことに、大きな欠落感を感じます。
これは我が国のエネルギー政策の議論全般にいえることですが、社会的な便益など「良い点」を評価して政策によって伸ばそうというのではなく、経済的負担の軽減など「ダメな点」を潰すために政策によって規制しようという観点が強く見られます。そういった規制的な視点の中でも、現在の議論の中で顕在化しつつある課題として挙げられているのは、FIT期間終了後の事業継続や、将来的な再投資の停滞などの長期安定的な事業運営に対する懸念、そして地域との共生や事業終了後の設備廃棄を含めた責任ある事業実施など、電源としての社会への定着です。
これまで太陽光発電が大量に導入されてきた理由として、当初FIT価格が高かったということもありますが、何よりも日照が良ければどんな場所にでも導入でき、設置までの期間も他の電源と比べて短期間で済むという点が挙げられます。その手軽さの裏返しとして、誰もがある意味気軽に参入できたことが、上記のような課題を抱えた状況を生み出したといえるでしょう。
では、「ポストFIT時代に入り太陽光発電は縮小していくのか?」といえば、むしろこれから2020年代が普及拡大の本番に突入する時期です。世界全体では年間100GW(1億kW)の太陽光発電が新設されていて、新たな技術開発も価格低減もさらに進んでいます。そして、再生可能エネルギーを地域電源として拡大していくフェーズに入る中では、地域偏在性の大きい風力・水力・バイオマス・地熱よりも、太陽光発電があらゆる地域で第一選択肢に入ることになるでしょう。その時に、ソーラーシェアリングは特に優位性を発揮します。
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