「誰でも参加できる電力市場」の実現へ、運用開始が迫るデジタルグリッドのP2P電力取引基盤とは?エネルギー管理(2/3 ページ)

» 2019年10月09日 07時00分 公開
[廣町公則スマートジャパン]

デジタルグリッドプラットフォーム(DGP)とは何か

――デジタルグリッドが構築するデジタルグリッドプラットフォーム(DGP)とは、具体的にどのようなものですか。

豊田氏 デジタルグリッドプラットフォーム(DGP)は、再エネなどの発電事業者と需要家である企業をつなぎ、電力や環境価値のP2P取引を可能にした全く新しい取引場です。ブロックチェーンにより、厳密な電源識別とトレーサビリティの確保を行うことができるので、特定の再エネ発電所でつくった電力だけを購入するといった要望にも応えます。

 従来の卸電力取引所(JEPX)のように難しい参加要件はなく、電力を扱う資格をもたない事業者であっても、P2Pの形式で売り買いすることができます。電力取引のためのシステム投資を行う必要もありません。私たちは、DGPによって、誰もが手軽に電力売買できる世界を目指しています。なお当面このプラットフォームを利用するのは、当社への出資企業(52社)や、このプラットフォームで取引する売り手・買い手になる予定です。

 DGPにおける電力取引には、株式のザラ場市場(編注:値段優先で、条件が同じであれば発注が早いものから売買を成立させるオークション方式の市場)のように、都度都度の約定により売買を成立させるものと、特定の発電家と需要家の間で年単位の契約を結ぶ長期相対取引があります。ザラ場での取引単位は、0.01kWhから行えます。JEPXの最小単位は通常100kWhですから、DGPがいかに柔軟な取引を可能にしているかお分かりいただけると思います。

「デジタルグリッドプラットフォーム(DGP)」のイメージ

――資格のない人が電力の売買をして、電気事業法には抵触しないのですか。

豊田氏 それはP2P電力取引を実現するための大きな課題でもあるのですが、当社のプラットフォームであれば全く問題ありません。これまでの電力市場においては、小売電気事業者などの資格が必要になりましたが、DGPは既存の市場とは異なります。形としては、私たちデジタルグリッドが小売電気事業者となり、当社が需給管理を行うバランシンググルーブの中でのやり取りとすることで、この問題をクリアしています。

 DGP参加企業に、取次店という形でバランシンググループに入っていただいて、取次店同士の取引という形で処理していくわけです。それについては、1年半以上にわたって資源エネルギー庁とも協議を進めてまいりまして、この仕組みであれば、現状の法的・制度的枠組みの中でもP2P電力取引が可能だということになりました。

――デジタルグリッドプラットフォームが実際に動き出すのはいつからですか・

豊田氏 現在、最終的な調整段階にあり、2020年1月には商業運用を開始する予定です.

――貴社への出資企業が同プラットフォームの参加者(売り手・買い手)になるとのことですが、具体的にはどのような企業が出資しているのですか。

豊田氏 地域電力会社・ガス会社・エネルギー関連企業・発電設備会社などの発電側企業、RE100加盟企業ほか総合商社・重機メーカー・住宅メーカー・金融機関などの大口需要家、それぞれ多岐にわたる企業52社にご参加いただいています(出資企業一覧)。

――このプラットフォームビジネスにおいて、デジタルグリッドはどのように収益を上げるのですか。

豊田氏 デジタルグリッドプラットフォーム(DGP)を通過した電気に、手数料として、kWh単位で従量課金させていただくというビジネスモデルになります。必要なシステム投資や個々の需給管理は、全て当社で自動行いますので、参加企業のコストは最小に抑えられると考えています。

――P2P電力取引を可能にした技術やシステムについて教えて下さい。

豊田氏 P2P取引おいては、どこで発電した電気を誰が使っているのかを証明すること、電源と需要をひもづけることが重要です。ブロックチェーンは、そのための技術として大きな役割を担っています。しかし、ブロックチェーンはあくまでも手段であり、大切なのは個々の需要家と発電家の情報を正確に収集・分析し、マッチングすることです。

 当社では、デジタルグリッドコントローラー(DGC)という独自のIoTデバイスを開発し、これを可能にしました。DGCのなかには、取引情報や設備情報をアクセルするブロックチェーン秘密鍵が格納されています。需要家側に設置されたDGCは、過去の実績データから需要量を予測し、価格を設定して、自動的に買注文を発信。発電側のDGCは、電源状況に応じた売注文を、デジタルグリッドプラットフォーム(DGP)に発信します。各事業者の手を煩わせることなく、デジタルグリッドプラットフォームでのP2P電力取引が成立するのです。

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