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» 2019年10月09日 07時00分 公開

エネルギー管理:「誰でも参加できる電力市場」の実現へ、運用開始が迫るデジタルグリッドのP2P電力取引基盤とは? (1/3)

東京大学発のスタートアップ企業、デジタルグリッド。同社が構築したP2P電力取引プラットフォームが、2020年1月に動き出す。2019年7月に就任した新社長、豊田祐介氏にその具体的な事業スキームとビジョンを聞いた。

[廣町公則,スマートジャパン]

 ブロックチェーン技術を活用した電力のP2P(Peer to Peer)取引に期待が高まるなか、こうした新たな電力取引プラットフォームの構築を目指す企業が国内でも増加している。東大発ベンチャー企業のデジタルグリッドもその1社だ。

 同社は2017年に設立された、東京大学・阿部力也研究室発のスタートアップ企業で、発電事業者と需要家が直接取引を行うことができるプラットフォームの構築を目指している。自家消費される再エネの「環境価値」を抽出して売買することも可能といい、従来の卸電力取引所(JEPX)を介さない、全く新しい電力取引の形を可能にしようとしているのだ。さらに、大停電のリスクを回避できる自立コミュニティ、分散電力ネットワークの構築にも取り組んでいる。

 デジタルグリッドでは2020年1月からこうした「P2P電力取引プラットフォーム」の運用開始を目指しており、この取り組みにいち早く参加しようと、現時点で、東京ガス、九州電力、住友商事、日立製作所、清水建設、ソニーなど52社が出資。このように、昨今国内外の多くの企業から注目を集めている。

 今回、2019年7月にデジタルグリッドの新社長に就任した豊田祐介氏に、同社の目指すP2P電力取引ビジネスの仕組みや、分散電力ネットワークの意義について話してもらった。豊田社長は学生時代、デジタルグリッドの創業者である阿部力也会長の研究室で研鑽を積んだ同会長の教え子。東京大学卒業後、外資系金融機関を経て、デジタルグリッドの創業に参画。以来、電力取引プラットフォームの開発を手掛けてきた。各界の有力企業を巻き込んだ子弟の挑戦が、電力の世界に何をもたらすのか興味は尽きない。

デジタルグリッドの豊田祐介社長

社会を変える新エネルギービジネス

――デジタルグリッドの事業概要について教えてください。

豊田氏 デジタルグリッドの事業には、大きく分けて2つの柱があります。1つは、発電事業者と需要家を直接結び、電力の自由な選択・売買ができるプラットフォームを構築すること。私たちは、このプラットフォームをデジタルグリッドプラットフォーム(DGP)と呼んでいます。ここでは電力そのものを取引するケースと、再生可能エネルギーがもつ環境価値だけを売買するケースがあります。

 もう1つは、再エネ電源を生かした災害に強い自立コミュニティを実現することです。従来の電力系統と「非同期連系」された分散電力ネットワーク(セル)を各地に形成し、大停電の心配がない強靭な地域づくりに貢献したいと考えています。非同期連系とは、普段は系統の電気を使いつつも、系統でトラブルが発生したときには遮断して、セル内にある再エネ電源や蓄電設備だけで自立することを可能にする技術です。この度の千葉の大停電も、昨年の北海道で発生したブラックアウトもそうですが......この分散ネットワークができていれば状況は変わっていたに違いありません。現在、埼玉県の浦和美園で実証を進めているのですが、既に技術は確立していますので、少しでも早い普及に向けて尽力してまいります。

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