神戸大学の研究グループは2020年5月、赤サビ(ヘマタイト)の光触媒作用を利用して太陽光と水から水素を製造する際の効率を飛躍的に高める構造制御技術の開発に成功したと発表。安価かつ安定で幅広い可視光を吸収できるヘマタイトの変換効率を理論限界値まで向上させることに成功した。
神戸大学の研究グループは2020年5月、赤サビ(ヘマタイト)の光触媒作用を利用して太陽光と水から水素を製造する際の効率を飛躍的に高める構造制御技術の開発に成功したと発表した。安価かつ安定で幅広い可視光を吸収できるヘマタイト(赤サビ)の変換効率を理論限界値(16%)の42%まで向上させることに成功した。
太陽光と光触媒を利用した水素製造は、現状その変換効率が数%にとどまっている。実用化に向けては10%程度以上に向上させる必要があり、その実現に向けた研究開発が進んでいる。
光触媒反応における効率低下の主要因は、光照射によって生成した電子と正孔が水などを基質分子と反応する前に再結合してしまう点にある。そこで神戸大学は今回、光触媒の超微粒子を配向を揃えて三次元構造化したヘマタイト(赤サビ)のメソ結晶(5nm程度の超微粒子の集合体)を合成し、このメソ結晶を透明電極基板に集積・焼結することで、導電性と水分解性能に優れたメソ結晶光触媒電極を開発することに成功した。
この電極のメソ結晶表面に助触媒を付着させて疑似太陽光を照射した結果、1.23Vの電圧印加で5.5mAcm-2の光電流密度で水分解反応が進行することが分かった。これはヘマタイトにおける世界最高性能であり、さらに100時間の繰り返し実験においても安定的に動作したという。
今回開発した技術はヘマタイトだけでなく、他の金属酸化物へも適用できるとしており、今後は、ヘマタイトメソ結晶光触媒電極の更なる高効率化と太陽光水素製造システムへの導入を産学協働で進めると同時に、人工光合成を含むさまざまな反応系への応用展開を図るとしている。
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