離島の再エネ普及の現実解となるか、沖縄電力の新事業「かりーるーふ」とは?太陽光(1/3 ページ)

「2050年にCO2排出ネットゼロ」を掲げる沖縄電力。多くの離島を抱え火力発電に依存せざるをえないなど、さまざまな制約がある同社が、再エネ普の目玉として開始した新事業「かりーるーふ」とは?

» 2021年04月26日 07時00分 公開
[川本鉄馬スマートジャパン]

 政府が2020年秋に「日本の温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロ」とする目標を宣言し、脱炭素化に向けた取り組みに大きな注目が集まっている昨今。大手電力会社も、再生可能エネルギー関連事業への取り組みを強化している。

 沖縄電力では2020年12月に「2050年までにCO2排出ネットゼロ」を目指す新たな目標を発表。その実現に向けた方針として「火力発電のCO2排出削減」と「再エネ主力化」の2つを掲げている。

沖縄電力が掲げる「2050年までにCO2排出ネットゼロ」に向けたロードマップ 出典:沖縄電力

 2021年3月に同社の再エネ主力化に向けた取り組みを紹介するメディアツアーが開催された。いわゆる「旧10電」と呼ばれる大手電力会社のなかでも、その地理的条件から再エネの調達方法が限られる同社は、どのように再エネの主力化を目指すのか――。

 その方策の一つとして沖縄電力が「かりーるーふ」という新事業だ。メディアツアーでは、2021年4月からスタートする同事業の先行事例が披露された。

限られる選択肢、どのように「再エネ主力化」を目指すのか?

沖縄電力・研究開発部の金城尚吾氏

 沖縄電力は、経済産業省がこの発表を行う前から排出CO2の削減や再エネの主力化、電力の安定供給を目指した活動を行ってきた。しかし、沖縄電力・研究開発部の金城尚吾氏は「沖縄電力には他の電力会社に比べ、再生可能エネルギーに関して不利な面がある」と話す。

 それが、「水力や地熱など、地の利を生かした再エネがない」(金城氏)という点だ。低炭素電源というくくりでは、沖縄電力は旧10電のなかで唯一原子力発電所を持たない電力会社である。必然的に脱炭素化・再エネの主力化に向けては、風力や太陽光といった再エネの開発に注力するしかない。

 そこで沖縄電力では、風力発電については2014年度から「大宜味(おおぎみ)風力発電実証研究設備」を開設し、大量の風力発電を電力系統に投入した場合の影響や出力安定の方法などを研究している。出力2000kW(キロワット)の大型風車2基に加え、容量4500kWhの鉛蓄電池を併設し、出力安定化技術の開発に取り組んでいるという。

「大宜味(おおぎみ)風力発電実証研究設備」

 風車は、風が来る方向に自動的に正対するようになっている。また、風速に応じてブレードの角度を変え、回転数や出力を一定に保つよう制御されるという。さらに、風速25m/s以上の強風時には風に対してブレードを並行にし、ローターの回転を止める。台風に見舞われることの多い地域特性を考慮し、風を受け流す安全策が施されている。

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