離島の再エネ普及の現実解となるか、沖縄電力の新事業「かりーるーふ」とは?太陽光(2/3 ページ)

» 2021年04月26日 07時00分 公開
[川本鉄馬スマートジャパン]

さまざまな制約条件のなか、太陽光発電をどう普及させるか?

 先に紹介したように、沖縄電力は以前から電力安定化やCO2排出量削減に積極的に取り組んできた。しかし、風力発電にしても太陽光発電にしても、新たに大型の施設を作るには用地の確保をはじめ、地域特性に由来するさまざまな課題がある。

 特に沖縄の場合、数多くの離島があり、そのほとんどが電力需要の多くを火力発電に依存している。しかし、これらのエリアに大型の再エネ発電設備を設置したり、島外から再エネ由来の電力を送電したりというのは、コスト面でも現実的ではない。

 これらの課題に対し、従来型の「大規模な発電設備の設置」という流れとは違った視点で太陽光発電の普及を目指すのが、かりーふーるという取り組みだ。

「かりーふーる」のロゴ。ロゴ内には蓄電池が描かれている(画像提供:沖縄電力)

無償で「太陽光+蓄電池」を設置

 かりーるーふは、沖縄電力と沖縄新エネ開発が共同で行う第三者所有モデル(PPA)事業だ。個人の住宅などに太陽光パネルと蓄電池などを無償で設置し、これらを沖縄電力らがアグリゲーターとして統合管理することで、全体を一つの仮想的な発電所として機能させる。

 ユーザー側は太陽光発電を設置する屋根を提供するだけで、設備のみならず運用に関しても一切の費用負担が無いのが大きな特徴だ。その代わり、発電した電力は沖縄電力のものとなるが、ユーザーはこの電力を割安な価格で購入することができる。災害時など系統電力の供給が止まった際は、太陽光と蓄電池からの電気を利用可能だ。

先行設置された「かりーるーふ」。(画像提供:沖縄電力)

 契約期間は15年だが、希望により延長も可能だ。なお、かりーるーふを構成する設備機器は、沖縄新エネ開発が所有し、保守を行う。一部を除き、ほぼすべての機器が屋外に設置される。

 PPAモデルでは電力会社とユーザーがWin-Winの関係を築きながら、住宅屋根を有効活用して太陽光発電の普及を図ることができ、地理的制約の多い沖縄エリアに最適な再エネ普及策として期待がかかる。かりーるーふという名称には“屋根(ルーフ)を借りる”という意味が込められている。また「かりー」には沖縄の方言で「縁起が良い」や「めでたい」という意味があり、福を招くことばとして使われているという。

 だが、沖縄電力ではかりーるーふを、一般的なPPAモデルとは異なるものにすることを意識したという。その背景について同社の金城氏は、「沖縄電力としては電力の安定供給に寄与するものをやっていく必要がある」とする。このため、かりーるーふの設計にあたっては単に太陽光パネルを設置するだけではなく、蓄電池を置くことにこだわったという。これにより、かりーるーふは蓄電池の無料設置まで含めたものとして、大手電力会社グループで初(2021年1月時点、沖縄電力調べ)のサービスとなった。

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