環境行動と消費を支える新たな価値観「マインドフル志向」とは?(1/3 ページ)

東京ガス都市生活研究所は、このほどオンラインによる「都市生活シンポジウム」を開催し、生活者(一般消費者)の価値観と消費行動に関する最新の調査結果を発表した。新たな価値観として提示された概念は「マインドフル志向」だ。

» 2022年03月31日 07時00分 公開
[廣町公則スマートジャパン]

 東京ガス都市生活研究所は2022年2月、オンラインによる「都市生活シンポジウム」を開催し、生活者(一般消費者)の価値観と消費行動に関する最新の調査結果を発表した。そこで消費者の環境行動と消費に深く関わる新たな価値観として提示されたのが「マインドフル志向」だ。

 マインドフル志向とは何か。企業にとって、それがなぜ重要なのか。東京ガス都市生活研究所は以下のように説明する。

 「今の時代の合言葉ともいえるキーワードにサステナブルがあります。企業としてサステナブルな商品やサービスを届けるべきという動きが広がってきました。しかし、サステナブルの実現にはそれなりの費用や労力が掛かるものの、お客様にその価値を感じてもらえないのではと躊躇(ちゅうちょ)してしまう本音の部分もあるのではないでしょうか。確かに消費者も、多くのコストをかけたり、我慢をしてまでサステナブルな行動をとるのは難しいと感じていることは、私たちのリサーチからもわかってきました。一方で、これらのジレンマを解決する生活者の新しい価値観も見えてきました。それが今回のテーマであるマインドフル志向です。

 例えば、廃材を活用したサステナブルな靴。地球環境のためというだけでは、なかなか購入に踏み切れないかもしれません。しかし、廃材を使用しているので一つ一つの柄が異なり、世界に一つだけという特別感や、どれにしようか選ぶ楽しみという魅力が加わると、購入しようという気持ちになってきます。われわれの調査でも、第一に地球や社会のためという構図ではなく、まずは自分の心を満たすこと、それが結果として地球や社会への貢献につながっていくものを選びたいという価値観が強くなっていることが分かりました。この価値観を私たちはマインドフル志向と名付け、サステナブル時代の新たな消費のカギになると考えました。企業は生活者のこのマインドフル志向を捉え、地球や社会に配慮して作った商品やサービスを、生活者の心を満たす価値に合致させて届けることが大切になります。そうすることで生活者の“欲しい”につながり、真のサステナブルが実現できるでしょう」

環境問題×マインドフル志向の関連を調査

 東京ガス都市生活研究所は1986年7月に設立された研究機関で、社会の変化や都市に暮らす生活者についての多面的な調査・分析に取り組んでいる。将来のライフスタイルやニーズを予測し、それをもとに生活者が豊かな暮らしを創造するための情報提供や提言も行っている。2022年3月には、生活トレンド予測レポート「環境MU意識」を公表した。

東京ガス都市生活研究所 統括研究員の松葉佐智子氏

 今回、同研究所が開催した「マインドフル志向」をテーマにしたシンポジウムでは、パート1「環境問題×マインドフル志向」、パート2「若者×マインドフル志向」、パート3「シニア×マインドフル志向」の3つのプレゼンテーションが実施された。ここでは、環境を意識した消費者の行動が、マインドフル志向とどう結びついているのかを分析したパート1の内容を紹介する。

 発表を行った同研究所統括研究員の松葉佐智子氏は、プレゼンテーションの狙いを次のように話す。

 「本日は生活者が本音で求めるサステナブルな暮らしについてお話しいたします。サステナビリティは、いまやあるゆる企業にとって欠かせないテーマといえます。そのなかでも気候変動・環境問題は、社会からの最大の関心事です。これからもお客様に選ばれ続ける企業であるためには、環境に配慮した事業活動が必須であるといえでしょう。一方で、お客様も様々な価値観を持っています。一言で環境に配慮した商品、サービスをご提供するといっても、どのお客様にも同じアプローチで良いのか、自社のターゲットとしているお客様にはどのようなことが響くのか、これらを明確にしていかないと、いくら良い商品・サービスをご提供したところで、その良さをしっかりと伝えることができません。そこで本プレゼンテーションでは、私たちは企業として何をすべきなのか、生活者の価値観から環境商材やサービスの効果的な訴求ポイントのヒントを探っていきます」(松葉佐氏)

 東京ガス都市生活研究所では、ファミリー・シニア・若年層を含む13名に対してオンライン・デプスインタビューを行い、環境行動などに関する自由回答を聴取し、仮設設計を行った。続いて、それを検証するために、1都3県の10代から60代の男女3096名を対象に、計40項目の環境行動について実施の有無を調べた。

 そして、環境行動の実施数により、調査対象者を「高実践層(20%)」「ミドル実践層(42%)」「ライト実践層(24%)」「非実践層(15%)」の4つのグループに分類し、その特徴を分析した。

実施した調査の概要(クリックで拡大) 資料提供:東京ガス

 性別・年代的な違いをみると、高実践層には40〜60代の比較的年齢の高い女性が多く、ミドル実践層は20〜30代の女性の割合が高かった。ライト実践層は若干、男性の方が女性よりも多いという傾向があり、とくに10代の男性の割合が高い。非実践層は75%が男性であり、とくに高齢の人の割合が高かった。なお、収入や学歴の違いによって環境行動が異なるということはなかったという。

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