見直しが必須の「容量市場」、現状の課題と新たな制度設計の方針は法制度・規制(1/4 ページ)

将来の電力供給力確保を目的に導入された「容量市場」。既に2020年に第1回の入札が行われたが、足元の電力市場環境の変化を受けて、制度設計の見直しが進められている。2022年4月25日に開催された第64回「制度検討作業部会」で議論された、容量市場の今後に関する検討内容を紹介する。

» 2022年05月11日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 将来の供給力確保を目的とした容量市場が導入され、2020年に第1回オークション(対象実需給年度:2024年度)が開催されたが、現在は2024年度の安定的な実需給の確保に向けた過渡期の段階にあると言える。

 足元のエネルギー情勢を見ると、2022年3月22日に東京・東北エリアにおいて初の需給逼迫警報が発令されたことや、ロシア・ウクライナ情勢による燃料価格の高騰により、安定供給確保の重要性が一層強く認識されている。

 このため資源エネルギー庁の制度検討作業部会では、デマンドレスポンス(DR)の一層の活用促進や高経年火力の維持等による安定供給確保に向けて、容量市場制度の見直しや他制度の措置に関する検討が進められている。

現行の容量市場による供給力確保量の仕組み

 3月22日の電力需給逼迫は、3月16日福島県沖地震による火力発電所の計画外停止や、3月としては異例の寒さによる需要の増加など複数の要因が重なったことにより発生した。

 現行の容量市場では目標調達量の算定にあたり、全国H3需要(最大3日平均電力)に対して稀頻度リスク対応分として1%、厳気象対応分として2%などを加算している。

表1.容量市場目標調達量(実需給 2024年度向け)出所:電力広域的運営推進機関

 容量市場の需要曲線は、供給力kWの調達コストと停電コスト(停電量と停電単価の積)の和となる総コストを最小化するよう作成されており、容量市場では元々、一定の停電発生を許容する仕組みとなっている。

 また上記の稀頻度リスクには各エリアの最大電源の脱落は含まれているが、今回の福島沖地震のような1エリアで数百万kW規模の電源脱落は想定されていない。

 よって安定供給確保強化のための1つの方向性としては、稀頻度リスク対応分や厳気象対応分等を増加させることにより、供給力kW調達量を増やすことが考えられる。

 この場合、約定総額が高額となる可能性があることや、調達量の変更は最短でも2022年度オークション(対象実需給年度:2026年度)以降となると予想される。

このため容量市場を補完する仕組みとして、1年程度の短期間で再稼働が可能な休止電源をリザーブしておき、供給力不足時に再稼働を可能とする、「戦略的予備力」の導入が提案されている。

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