見直しが必須の「容量市場」、現状の課題と新たな制度設計の方針は法制度・規制(3/4 ページ)

» 2022年05月11日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

容量市場の追加オークションの開催判断は?

 実需給の4年前に開催されるメインオークションの時点では確実な稼働が見通せないものの、実需給が近づくと稼働が見通せる電源として、自家発電機やDR、未稼働の原子力などが挙げられる。

 これらの電源等にも取引の機会を与えるため、2021年に開催された第2回オークションでは、メインオークションにおける調達量の一部(H3需要の2%、約300万kW分)を控除し、1年前(2024年度開催)の追加オークションで調達することとした。

 しかしながらメインオークション後の需給の変化により、供給力の追加が不要と判断される場合には、追加オークションは開催されないこととなる。

 このように追加オークション開催の有無は予見性が乏しいことから、メインオークションで落選した電源等の休廃止が進むおそれもある。

 このため追加オークション前の供給力確保量が目標調達量以下の場合には、原則として追加オークションを開催することとして、それ以外の場合には需給の状況を踏まえて、追加オークション開催の要否を判断することとした。

図3.追加オークションの開催判断のイメージ 出所:制度検討作業部会

発動指令電源の募集量を拡大へ

 発動指令電源とは、単体の期待容量が1000kW未満の電源や、安定的供給力を提供できない自家発・DRなどを組み合わせることで期待容量が1000kW以上の供給力を提供するリソースである。

 初回(2020年度)オークションでは発動指令電源の調達上限は3%とされたが、DRの成長を促進する観点から、第2回(2021年度)オークションでは調達上限は4%(メインオークション分を3%、追加オークション分を1%)に拡大された。

 第2回オークションでは、発動指令電源の応札容量合計(566万kW)がメインオークションの調達上限容量(475万kW)を超過したため、第3回(2022年度)オークションに向けて募集量の拡大が検討されてきた。

 しかしながら発動指令電源は安定電源とは異なるリクワイアメント(年間最大12回、1回/日、平日9時〜20時、3時間継続、3時間前指令)に基づいて運用されるため、供給信頼度を維持する観点から、発動指令電源の供給力を評価することが必要となる。発動指令電源の供給力評価は、再エネや揚水発電と同様に、安定電源代替価値として評価される。

図4.EUE 算定における再エネ・発動指令電源の供給力評価 出所:調整力及び需給バランス評価等に関する委員会

 このため、発動指令電源の調達量(kW価値、期待容量)は、導入量に調整係数を乗じた値となる。

【調達量(kW価値、期待容量)=導入量×調整係数】

 広域機関の試算によると、発動指令電源の導入量が少ない段階では調達量(kW価値)は増加していくものの、一定量を超過すると飽和し、調達量(kW価値)には一定の上限があることが確認された。

 このため第3回(2022年度)オークションでは、発動指令電源の募集量はH3需要の5%(792万kW程度:メインオークション4%+追加オークション1%)に拡大した上で、調整係数はオークションの事後的に算定することとした。

図5.発動指令電源の導入量と調達量の関係 出所:容量市場の在り方等に関する検討会

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