電力供給の信頼度評価は基準を見直しへ、太陽光の導入拡大や需給実態を考慮エネルギー管理(1/4 ページ)

電力需給の安定供給に対する懸念が高まっている昨今。政府では電力の安定供給に関する信頼度評価の算定方法を見直す方針だ。本稿では現状の評価手法の概要と、今後の見直しの方向性を整理する。

» 2022年07月08日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 2022年6月下旬に「電力需給ひっ迫注意報」が連続4日間発令されるなど、電力の安定供給に対する懸念が高まっている。

 電力の安定供給性は、一般には停電(供給支障)の起こりやすさ/起こりにくさ(停電頻度や停電時間長さ)として認識され、一定の「基準」や「評価方法」に基づき評価したものは電力系統の「供給信頼度」と呼ばれている。

 供給信頼度の「指標」や「基準」「評価方法」は、電力システム改革以降、変化してきているが、足元の需給逼迫を踏まえ、現在の供給信頼度評価についても多くの課題が指摘されている。

 供給信頼度の在り方は、電力需給検証のほか、電気事業者が作成する「供給計画」や容量市場オークション等にも関係する重要なテーマであるため、その変更の方向性を把握しておきたい。

供給信頼度の指標とは?

 供給信頼度の「指標」は一つではなく、図1のように、供給力不足(停電)の回数や時間長さ、不足量を基準とする複数の方法が存在し、諸外国の状況もさまざまである。

図1.供給信頼度の指標例 出所:調整力及び需給バランス評価等に関する委員会

 日本では再エネ(特に太陽光発電)大量導入前までは、年間最大需要時(例えば8月の15時)において必要供給力(H3需要:各月最大3日平均電力の108%など)が確保されているかどうかを評価・検証していた。よって電力系統利用協議会による供給信頼度評価では、適正予備率8〜10%を「指標」としていたことが2012年報告書で述べられている。

 実際には2019年以前は、指標「LOLP:Loss of Load Probability」が採用され、LOLP「0.3日/月」が目指すべき供給信頼度基準として設定されていたが、分かり易さの観点から、適正予備率の確保を指標として管理していた。

 ところが再エネ(特に太陽光発電)の大量導入に伴い、太陽光発電が高出力となる昼間帯(8月15時など)よりも太陽光発電出力が低出力(またはゼロ)となる夏季点灯帯や冬季最大需要時などにおいて、供給予備力が小さくなる事象が増加し始めた。

 よって、従来の最大需要時(のみ)の評価から年間8,760時間を対象とした評価を行うことの必要性が増し、確定値ではなく、確率論に基づき評価する手法が導入されることとなった。

 図1の3つの指標を比較検討した結果、エリアの規模によらず全国一律の供給信頼度基準を設定できることなどから、日本ではEUE(Expected Unserved Energy)が採用されることとなった。正確には、「需要1kWあたりのEUE」:1年間における供給力不足量の期待値[kWh/kW・年](見込み不足電力量)である。ただし現在も、LOLPとLOLEは補助指標として位置付けられている。

なお電力システムにおける供給信頼度には、「アデカシー」と「セキュリティ」があり、それぞれについて一定の基準を満たす必要がある。アデカシーとは需要に対して十分な電源予備力と送電余力が確保されていること、セキュリティとは落雷などの災害によって突発的な障害が発生した場合においても、周波数、電圧、同期安定性等が適切に保たれることを意味する。

 アデカシー評価における停電の代表的な例は、「高需要日に、電源の計画外停止や再エネの出力低下が重なり、供給力が不足する」という状況であり、6月下旬の需給逼迫は、アデカシー面での供給信頼度が脅かされた状況であったと言える。

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