電力供給の信頼度評価は基準を見直しへ、太陽光の導入拡大や需給実態を考慮エネルギー管理(2/4 ページ)

» 2022年07月08日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

現状のEUE算定の方法は?

 供給信頼度指標を従来のLOLP評価からEUE評価に変更するにあたっては、全国の供給信頼度が「従来レベル」を下回らないことが大前提とされた。

 従来の供給予備率の考え方としては、まず年間を通じて一定の予備率(偶発的需給変動対応分)7%(=LOLP 0.3日/月)を確保したうえで、夏季・冬季にはさらに厳気象対応分2%および稀頻度リスク対応分1%を考慮した予備率を設定していた(いずれもH3需要ベース)。(※本稿では持続的需要変動対応分=1%に関する記述は省略する)

図2.必要供給予備率(2019年度) 出所:調整力及び需給バランス評価等に関する委員会

 この必要予備率から全国(沖縄を除く9エリア)合計のEUEを算定すると、770万kWh/年と算定される。ここから需要1kWあたりのEUEを算定すると0.048kWh/kW・年となるため、これが新たな供給信頼度基準として設定された。

表1.需要1kWあたりのEUE 出所:調整力及び需給バランス評価等に関する委員会

 この基準を需要家1kWあたりの停電時間に換算すると、約2.9分/年の供給支障が発生するという試算となり、仮に1回あたりの停電時間を1時間とすれば、約20年に1度、供給力不足による停電が発生すると試算される。

再エネの供給力をどう評価するのか

 火力等の安定電源はピーク需要に合わせて最大出力で発電できることから、EUEおよび従来のLOLP評価いずれにおいても、その出力は100%供給力として評価されている。

これに対して変動再エネ電源は、気象条件や時間帯により発電出力が変化することから、従来の評価では保守的に、「L5出力比率」が採用されてきた。

 太陽光発電の場合、至近過去20カ年の最大3日需要(H1〜H3)発生日において、各時間帯で太陽光出力実績(計60点)を大きさの順に並べ、各時間帯の下位5日の平均値(L5値)から算出された出力比率を、設備容量に乗じることとなる。

 2020年度以降、再エネの供給力(kW)評価は、L5値方式から調整係数方式へと変更された。調整係数方式では、再エネ電源の供給力(kW)価値は、設備容量に一定の調整係数を乗じることにより、安定電源代替価値として表されることとなる。

 図3の左図は再エネ(太陽光)の導入前、右図は太陽光の導入後を表している(縦軸はkW)。左右の図では、赤い斜線で表された供給力不足量(kWh)の面積は同じである。

図3.EUE算定における再エネの供給力評価イメージ 出所:調整力及び需給バランス評価等に関する委員会

 8,760時間のEUE算定による供給信頼度評価においては、供給力不足の発生時間帯などに違いがあっても、供給力不足量(kWh)が同じであれば、同じ供給信頼度として評価することとなる。

 右図では太陽光導入により、緑色の安定電源の高さ(kW)を下げることが可能となっている。このように、再エネ導入よる安定電源必要量の削減可能量が、安定電源代替価値として評価される。

 仮に太陽光100kW導入により、安定電源20kWを減少させることができるならば、その太陽光の供給力評価は20kWとなるため、元々の設備容量100kWに乗じるべき調整係数は0.2(=20%)となる。

 調整係数は、電源種別や地域、季節によって大きく異なる数値となる。

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